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マレーシア進出!
会計士が語る「会社設立」「会計」「税務」のリアル


マレーシア・クアラルンプールで十割そばを提供しながら日本文化の企画展示会スペースを備える店舗「元年堂(がんねんどう)」。静岡の十割そば屋「元年堂」の海外一店舗目として2024年9月にオープン。日本企業やローカルの人々とのコラボレーションイベントなどを多数行い、リピーターを増やしながら『ここでしか味わえない日本の「体験」と「感性」』を発信しています。

今回は、この「元年堂」の成功を支える心強いパートナーの一人、カルチャーリンクマレーシアの会計顧問・日浦康介氏にインタビューを行いました。公認会計士・税理士という専門家の視点から、会社設立・会計・財務面での注意点、マレーシア市場の魅力、そして海外進出を検討されている方々への熱いメッセージをお話いただきました。

Culture Link Malaysia. Sdn.Bhd

元年堂の運営母体。マレーシア・クアラルンプールで十割そばを提供する元年堂を運営しつつ、日本企業やアーティストなど日本文化、日本の作品を展示する“ギャラリースペース”を併設。海外進出支援やテストマーケティングのサポートを行っている。

▼元年堂マレーシアクアラルンプール
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登場人物

日浦康介(KOSUKE HIURA)

CULTURE LINK MALAYSIA SDN.BHD. 会計顧問

日本公認会計士・税理士
2010年2月、新日本有限責任監査法人入所。札幌事務所にて、金融業、小売業、建設業、電力業等の法定監査業務に従事。またIPO支援やIFRS導入支援等の非監査業務も担当。2014年9月にシンガポールに渡り、Ernst & Young LLP Singaporeで勤務。日系企業、現地企業を中心に法定監査等のインチャージを担当。その後、フェニックス・アカウンティングのシンガポール事務所にDirectorとして参画。日系企業中心に法人設立、会計税務サポートに従事。2017年に同グループのマレーシア事務所を立ち上げ、マレーシア事務所の責任者を兼務。現在は、同グループ全体のManaging Partnerとしてグループの経営を行っている。

ーまずは自己紹介をお願いします。

日浦:
カルチャーリンクマレーシア会計顧問の日浦です。日本における公認会計士・税理士資格を有しており、現在はシンガポール及びマレーシアを中心に、海外進出を目指す日系企業を中心に会計税務面のサポートしています

お客様は日系企業が中心なので、日本の会計事情に精通している私が、現地で雇用しているローカルの会計士と協力しながら業務を進めています。海外にいながら日本との架け橋になるという幼い頃からの夢が形になっています。

マレーシア進出の落とし穴:会社設立・会計・税務の注意点

ー次に、マレーシアの税制面について教えてください。日系企業が特に注意すべき点などはありますか?

日浦:
東南アジアの税制については「明文化されていないルールがあるのではないか」であったり、「担当者によって解釈が異なるのではないか」といったお客様のご心配の声をよく伺います。

しかし、マレーシアの税制面は比較的クリアになっていて、取り組みやすいです。法人所得税が24%で、現地企業とのジョイントベンチャーを作ると税率が下がる等のメリットもあります。

隣国と比較してみると、シンガポールは法人所得税は17%と低いですが、コストが高い。マレーシアは税金はそこまで低くないものの、コストが安いです。両者ではマーケットも何をやるかでも全く変わってきますが、税金もコストとして捉え、全体のコスト感を比較し検討するのが良いかと思います。

シンガポールは初期費用や物価がかなり上がっているので、事業の実行部隊をマレーシアに置くといった工夫をされている会社も多いです。

ーシンガポールとマレーシアのビジネス環境について、どのような違いがあるのでしょうか?

日浦:
ビジネスのしやすさや税制面で考えると、
シンガポールの方が進出のハードルは低いと感じます。シンガポールはライセンスが不要な事業が多いので、比較的すぐにビジネスを開始できます。しかし、マレーシアでは事務所や店舗を持つ場合どの会社でもビジネスライセンスを取得する必要があります。事務所に紐づくライセンスを取得しないと、基本的には営業を開始できません。

そのため、海外進出のスキームとして、シンガポールをベースに置き、実際の事業展開はマレーシアやタイなどで行うという工夫をされているケースも多いですね。

ー 会社設立についてはいかがでしょう?

日浦:
会社設立自体は、両者とも比較的簡単で、ステップも基本的には同じです。会社名を予約し、承認されたら設立登記に進むという流れで、その他に資本金や株主などの基本的なことを決める必要があります。

ービザの取得については違いがあるのでしょうか?

日浦:
はい。シンガポールもビザの要件が厳しくなってきていますが、マレーシアは更に
手続きが複雑で時間がかかります。シンガポールは申請すれば比較的すぐに結果が返ってきますが、マレーシアは手続きが長く、担当官の判断によって対応が異なることもあります。ナショナルスタッフの雇用も原則必須ですし、事業に必要なライセンスを取得する必要もあります。

ーマレーシアでビザを取得する際の難しさは、どのような点にあるのでしょうか?

日浦:
マレーシアでは、ビジネスが回っていることを証明しないとビザが取得できません。つまり売り上げが立っている状態を示す必要があります。しかし、まず人が来て、商売を始めて初めて売り上げが立ち始めるわけで、その前提が逆になっていると感じることがあります。

ービザ取得に向けてのアドバイスはありますか?

日浦:
ビザに関しては、必ずしも明確なルールとして明示されていない部分や、ルールが決まっていても実務的には運用が異なっていたり、解釈の余地がある領域もあります。そのため、決まった枠組みの中で、事業の進め方や関係各所への説明方法を工夫したりする必要があります。方法は1つでないことが多いので、いくつかのアプローチを考えてトライしていくことが重要だと思います。

ー辛抱強さも必要になってきますね。次に、資金調達についてお伺いします。日本企業が海外へ進出する際、一般的にどのような資金調達手段が用いられることが多いのでしょうか?

日浦:
海外において新規に事業を開始し、実績のない段階で現地の金融機関等から融資を受けることは、非常に困難であるのが実情です。そのため、一般的には親会社からの資金援助か、自己資金で事業を開始するケースが多いですね。

こうした状況において、元年堂のように日本国内で資金調達を行い、それを海外事業に投入するという形態は非常に稀で、特筆すべき点だと思います。このモデルケースを成功させることで、同様のスキームを他の会社にも展開していくことは大いに期待できると思います。

 

左から株式会社シード 代表 西島英弘 / CULTURE LINK MALAYSIA 社長 野口亮 / 会計顧問 日浦康介
※株式会社シードはCULTURELINKMALAYSIAの親会社

 

ー会計面で、日系企業が他に注意すべき点はありますか?

日浦:
特に「これを必ず覚えておいてください」といった注意点はありません。会計実務においては、列挙すればキリがなく、日本国内と同様の手続きもあれば、異なる点もあります。

そうした細かな点を覚えていただくよりは、会計に関する重要な部分については私たちが責任を持って対応しますので、お客様には、本業に集中していただきたいと考えています。

ー海外進出の際、自社で全てを対応しようとするとどのような問題に直面することが多いでしょうか?

日浦:
お金のトラブルはよく聞きますね。海外進出の際は、日本国内のように全てを日本人スタッフのみで対応することは難しく、
現地のスタッフを採用し、育成していく必要があります。金銭を取り扱う業務も発生するため、スタッフの管理体制を構築しないと、失敗のリスクが高まります。

事業運営と並行し、こうした管理業務を行うことは非常に負担が大きいため、私どもがバックオフィス業務をサポートさせていただいております。

ー非常に心強いパートナーですね。元年堂はそば店ですが、特にマレーシアでの飲食店経営の場合、注意すべきことは何でしょうか?

日浦:
マレーシアは国土が広いため、
飲食店の出店場所選びは非常に重要です。場所によって人種構成や客単価がなど大きく異なるため、どこに出店すべきか迷われる方が多いと思います。

現状では、見切り発車で出店してしまうケースが多いようですが、事前にしっかりとマーケティングを行うことをお勧めします。

例えば、クアラルンプールのモントキアラエリアへの出店を検討している企業さんであれば、まず「元年堂」を利用してテストマーケティングを行うことは非常に有効だと思います。

また、コストについては、日本と比較すると一般的にマレーシアの方が低い傾向にあります。しかし仮にコストが3分の1に圧縮されたとしても、売上高も同様に3分の1に減少してしまうようでは海外進出する意味が薄れてしまいます。売上高を維持しつつコストを低減し、利益率を上げることが望ましいです。

マレーシア市場の魅力:総合点の高さと今後のポテンシャル

日浦さんが現在活動されているマレーシア市場について、どのように捉えていますか?

日浦:
手続き面での忍耐力が必要になってくる場面もありますが、
非常にポテンシャルがあると思います。コロナがようやく落ち着き、今は様々な日系企業が進出してきています。また盛り上がってくるのではないかという期待感があり、非常に楽しみな市場です。

日本からの進出企業は、以前は製造業が中心でしたが、最近はサービス業が伸びていて、この傾向はしばらく続くのではないかと思います。製造業に関しても、現地でのパートナーを見つけて工場を作り、マレーシアを拠点に他国に輸出していくスキームを構築できれば、今後も可能性があると思います。

また、ハラール市場についても、マレーシアならではの大きな可能性があると感じています。マレーシアはイスラム教徒の人口が約63%(約2,000万人以上 ※2023年時点)を占めており、ハラール認証の有無が飲食や製品選択に大きく影響する国です。
世界のハラール市場は約3兆ドル(約450兆円)規模とも言われており、その中でマレーシアは「グローバル・ハラール・ハブ」として国策的にこの分野を支援しています。実際、マレーシア政府は「Halal Industry Master Plan 2030(HIMP 2030)」を掲げ、2030年までにハラール製品とサービスの輸出額を**年370億ドル(約5.5兆円)**まで拡大する目標を持っています。
このように、ハラール認証を取得することは国内市場での信頼性向上に留まらず、中東、インドネシア、バングラデシュなど他のイスラム圏約20億人の消費者層へのアクセスを可能にする、極めて戦略的な選択肢です。
したがって、マレーシアを「イスラム市場への玄関口」として位置付け、ここでのハラール対応を足掛かりにグローバル展開を視野に入れることは、今後の海外戦略において大きなアドバンテージになると考えています。

ーマレーシアが選ばれている理由はどこにあるのでしょうか。

日浦:
ビジネスの面では英語が通じ、治安やロケーションが良く、時差がない点が評価されていると思います。また、タイなどに比べると会計処理がしやすいです。

ライフスタイルの面でも、居心地が良く、物価が高すぎないので日本人にとって住みやすい国だと思います。全体のバランスを考えると、総合点が高い。こうした点が、「日本人が住みたい国ランキング」で長年1位を取っている理由だと思います。※日本人に人気の移住先としてマレーシアが14年連続1位にランクイン(ロングステイ財団調べ『ロングステイ希望国・地域2023』より)

ーありがとうございます。実際に海外進出を決める前に準備すべきことはありますか?

日浦:
まずは、実際に現地に行ってみて人と話して、
ニーズをしっかりと把握することだと思います。ご自身の提供したい商品やサービスが本当に受け入れられるのか実現したいビジネスモデルが実際に機能するのかをまずは調査するべきですね。

我々も、マレーシアを訪問した際にお客様から「良い会計事務所がないので困っている」と言うお声がけをいただき初めてニーズがあることを確認し、マレーシアに進出したという経緯があります。

海外進出のチャンスは、誰にでもある。一歩踏み出す人をサポートしたい

ー元年堂の取り組みについてはどのように捉えていますか?

日浦:
おそばが美味しいのは前提として、(企画展示会スペースという)
人が集まれる場があるのが強みだと思います。単なるレストランではなく、+αがある点が素晴らしいですね。

元年堂マレーシアでテストマーケティングを目的にシヤチハタ100周年企画イベントに現地のお客様で賑わう様子

 

認知度が上がればこれから更に盛り上がると思います。ローカルにどうやって溶け込んで行くかが次の課題だと思いますし、その部分をお手伝いしていきたいと思っています。

ー最後に、マレーシア進出を検討されている方々に向けて、メッセージをお願いします。

日浦:
私は、
海外へ挑戦するチャンスは誰にでもあると思っています。ですから、一歩踏み出したいという方を心から応援したいです。マレーシアを足がかりに、そこから得られる情報や人脈を活かして、さらに他の国へと大きな視野を持っている方々とぜひご一緒したいですね。

そのために、私たちも世界中に拠点を増やし、皆様が進出しやすい環境を整えていきたいと考えています。現在、インドとアメリカへの進出準備を進めており、将来的にはヨーロッパやオーストラリア、さらにはアフリカへとサービスを拡大していく構想もあります。

日本は、少子高齢化という世界でも類を見ない状況に直面しています。この経験やノウハウは、今後必ず他の国々でも活かせるはずです。そのためにも、まずは海外に出て力をつけ、グローバルな視点を持つことが重要だと考えていますし、そのためのサポートを全力でさせていただきたいと思っています。

海外進出をご検討されているものの、具体的な進め方が不明確なお客様へ。
弊社では、マレーシアにてそば店運営とテストマーケティングが可能な企画展示会スペースを運営しており、会計やマーケティング、店舗開発のスペシャリストを集めた専門チームがお客様の課題解決を支援いたします。

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