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【筑波大学 辻村真貴 氏】
「課題解決型学習」で世界へ
筑波大学マレーシア校の挑戦

マレーシア・クアラルンプールで十割そばを提供しながら日本文化の企画展示会スペースを備える店舗「元年堂(がんねんどう)」。静岡の十割そば屋「元年堂」の海外一店舗目として2024年9月にオープン。日本企業やローカルの人々とのコラボレーションイベントなどを多数行い、リピーターを増やしながら『ここでしか味わえない日本の「体験」と「感性」』を発信しています。

今回はマレーシアで事業を行う方のリアルな声をお届けすべく、筑波大学学際サイエンス・デザイン専門学群(マレーシア校)学群長の辻村真貴教授にお話を伺います。水文学や水資源学を専門とし、長年地下水の流れや水資源評価について研究されてきた辻村教授。マハティール元首相からの熱烈な依頼を機に、マレーシア校の準備室長として設立に尽力。コロナ禍という困難を乗り越え、2024年9月に開校を実現しました。辻村教授がマレーシアでどのような教育の活路を見出したのか、独自の入試方法、学生たちの印象、そして今後のビジョンについてお届けします。

Culture Link Malaysia. Sdn.Bhd

元年堂の運営母体。マレーシア・クアラルンプールで十割そばを提供する元年堂を運営しつつ、日本企業やアーティストなど日本文化、日本の作品を展示する“ギャラリースペース”を併設。海外進出支援やテストマーケティングのサポートを行っている。

▼元年堂マレーシアクアラルンプール
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登場人物

辻村真貴(MAKI TSUJIMURA)
国立大学法人筑波大学生命環境系 教授。
学際サイエンス・デザイン専門学群(マレーシア校)学郡長。
マレーシア海外分校のHPはこちら

ーまずは自己紹介をお願いします。

辻村:
筑波大学学際サイエンス・デザイン専門学群(マレーシア校)学群長の辻村真貴と申します。昨年2024年9月2日に開校した筑波大学マレーシア校の、その準備段階である海外分校設置準備室で室長を務めておりました。

ー専門とされている研究分野について教えてください。

辻村:
専門は水文学・
水資源学、特に井戸水や地下水の研究です。ある特定の地下水がどこから来て、どこを通って、どれくらいの時間をかけて流れてくるのかを明らかにすることが主な研究テーマです。

例えば、富士山に降った雨が本当に地下水になっているのか、それとも別の場所に降った水なのか、あるいは何年かけてここまで来ているのか、といったことを調べています。

地下水の保全のためには、その流れを把握することが不可欠です。特定の場所だけを保全しても、水源地が汚染されてしまえば意味がありません。上流で汚染が発生した場合、汚染物質が地下水に到達するまで時間がかかることがあります。その地下水が10年かけて到達する場合、汚染が顕在化するまでに10年かかる可能性もあります。そのため、地下水の流れを把握することは非常に重要なのです。

マハティール元首相からの強い要望でマレーシア校が実現

ーありがとうございます。日本の国立大学が海外に分校を出すというのは画期的な出来事だと感じたのですが、どのような経緯で開校に至ったのでしょうか?

辻村:
以前からマレーシア日本国際工科院(MJIIT)との共同学位プログラム等を通じて、筑波大学とマレーシアの間には教育的な繋がりがありました。
そのような背景があり、2018年11月にマハティール元首相に本学から名誉博士号を授与した際、「マレーシアに、筑波大学の海外分校を作ってほしい」という直接のご依頼があったことが大きなきっかけとなりました。

この依頼を受け、2019年4月に筑波大学マレーシア海外分校設置準備室が立ち上がりました。実は、私は上記の共同学位プログラムの初代責任者を務めていた経緯もあり、この準備室の室長を任されることになりました。そこから5年半の準備期間を経て、昨年の2024年9月2日にようやく開校式を迎えることができました。

ーコロナ渦という困難を乗り越え、開校に漕ぎつけたのですね。筑波大学マレーシア校は、従来の日本の大学の海外分校とはどのような点で異なるのでしょうか?

辻村:
日本の大学が、海外で日本の学位を授与するのは初めての試み
となります。日本の他の大学でも、海外にキャンパスを持っている所はありますが、基本的に現地の学位を出しているため日本の学位を授与する大学は今までになかったのです。どの組織が学位を授与するのかは、大学の質保証に関わる最も重要な点なのです。

ー教育内容についても詳しく教えてください。

辻村:
マレーシア校では
際サイエンス・デザイン専門学群」という学部に相当する教育組織を設けており、1学年の定員は40名、4学年全体で160名、専任教員は14名です。現在一期生として12名学んでおり、その内訳としてはマレーシア人学生が6名、日本人学生が6名となっています。

当初はリベラルアーツを重視した学部を考えていたのですが、マレーシアでは「リベラルアーツ」という言葉が「一般教養」と解釈され、広く浅い学びという印象を与えてしまう懸念がありました。そこで、「学際サイエンス・デザイン専門学群」と名付け、「問題解決型実践学修」を中心にした教育を行うことにしました。

教育内容としては、データサイエンスを中心に据えつつ、理系人材の育成に偏ることなく、自然科学・人文科学・社会科学もバランス良く学び、データサイエンスのスキルも習得できるようにしています。また、文化多様性についても教育し、地球規模の課題解決に貢献できる人材育成を目指しています。

幅広い教育を行うと浅くなってしまうため、授業の4分の1程度をPBL(Project/Problem-Based Learning)と呼ばれる課題解決型の実践的な授業にしていることも特徴の一つです。

課題解決型学修が拓く、学生たちの無限の可能性

ー入学試験についても教えていただけますか?

辻村:
実は、日本の大学入試とはかなり異なる形式をとっています。

書類審査を通過した応募者に対して、半日以上かけ、オンサイトのみで面接とグループディスカッションを実施しています。受験生と同数程度の教員がずっと見ているという緊張感のある状況の中で、ディスカッションとプレゼンテーションを行ってもらいます。

ー新たな形式の入学試験を導入されてみて、手応えはいかがでしたか?

辻村:
(新しい入試形式の採用で)当初は少し心配もあったのですが、受験生同士で自然と役割分担が出てきたり、徐々にチームワークが出てくるのが興味深いと感じました。

そのようなコミュニケーション能力や協調性の高い学生が入ってくるのであれば、今まで筆記試験で専門性を問うていたのは何だったのだろうか」、とさえ思うようになりました。筆記試験で見ている能力は本当に一部でしかないのではないかと。

もちろん、日本の従来型の大学入試も、高校までの基礎学力や読解力・解析力等を確認するためには有効だと思います。特に、人口が右肩上がりでどんどん増えて、大学の3倍4倍もあるような状況であれば。しかし、人口が減っている中で国際競争力を高めなければならない現在、従来の入試を続けているのは単なる怠慢ではないかとさえ感じています。

このような方法は筑波大学にとっても実験的な部分があるので、教育担当副学長や担当者に逐一情報共有しています。リーディングケースにしていきたいと考えているので、むしろ今後はこのようなやり方を採用していくべきだと考えています。

今回の入試で入学してきた学生さんを見て、何か驚いたことや印象的だったことはありますか?

辻村:
学生たちの情報収集能力には本当に驚かされました
「こんな情報、Webにあるんだ」「よくこんなのを見つけてくるな」と感心してしまうような情報を、彼らは簡単に手に入れてきます。

例えば、ある学生グループが「自動運転技術に挑戦したい」と提案してきたので、少しだけ研究費を渡してみました。すると、彼らは自分たちで模型の鉄道セットを買ってきて、マイコンを使って自動で動くシステムを組み上げてしまいました。

さらに、電車が駅でスムーズに停車するように、自分たちでプログラミングまでしていました。そのグループには、もともとプログラミングの専門知識を持っている学生はいなかったのですが、それでも学生たちは自分たちで調べ、協力して、見事に自動運転を成功させました。本当に驚きましたし、彼らの自主性と能力に感心しました。

ー興味深いですね。学生たちは他にどのような課題を設定して学習を進めているのでしょうか?

辻村:
学生たちには、最初は身近な問題から始めるように指導しているので、「違法駐車をなくしたい」「水道水を飲めるようにしたい」といった課題が実際に上がりました。他にも、日本文学や漫画の中にあるジェンダー問題など。

ー想定される卒業生の進路についても教えてください。

辻村:
卒業後の進路としては、まずマレーシアに進出している日系企業への就職を想定しています。また、日本語が堪能なマレーシア人学生であれば、日本国内に本社を置く日本企業への就職も十分に可能だと考えています。

具体的な業界としては、現段階では工学系、特に自動車産業への就職が多くなるだろうと予測しています。しかし、金融や不動産業界への道も開けており、例えば、本学は三井不動産様や三井住友銀行様等の企業と包括協定を締結しており、こうした連携を通じ、不動産開発業者や金融機関でのデータ分析といった業務に携わる可能性も十分にあります。

このように具体的な進路の例をいくつか示しながらも、課題解決型の学修を通して、学生には無限の可能性があると伝えています。

ー1期生の皆さんの進路が楽しみですね!今後のビジョンについても教えてください。

辻村:
個人としては、この2年間を非常に重要な期間と捉え、前向きに進めていきたいと考えています。何といっても
学生リクルートが最優先の課題です。先日シンガポールにも足を運びましたが、近隣諸国も含め、より多くの学生を確保することが当面2年間の最大の目標です。

また、大学として授業をきちんと運営していくことは大前提ですが、大学の機能は授業だけではありません。サークル活動や学生生活、アルバイトといった課外活動も非常に重要ですが、こちらではサークル活動がまだ十分にありません。そのため、何とかして課外活動の充実を実現したいと思っています。加えて、大学内部の運営を円滑に進めることも重要な課題です。

もう少し長期的なビジョンとしては、後に続いてくれる大学が現れることが最も重要だと考えています。そのためには、持続可能なビジネスモデルを確立することが不可欠です。マレーシア側からも様々な提案をいただいているので、それらも踏まえながら持続可能な運営体制を構築していきたいです。

そのために、教育に関するノウハウはできる限りオープンにし、授業の進め方なども公開していくことを検討しています。もちろん、個人情報には十分配慮する必要がありますが、入試についても情報公開を視野に入れて検討していきたいと考えています。

ー最後に、元年堂の取り組みについてどのような印象をお持ちですか?

辻村:
まず飲食店というものは、マレーシアでは日本よりもずっと身近な存在だと思います。もちろん、ローカルの方たちが日頃から利用するお店とは少しジャンルが違うのかもしれませんが。そこで
集まる人々が集まってコミュニティができるというのは、とても面白い取り組みだと思います。

日本の良いところを伝えながら、現地のローカルの人も集まるような場所を作っているというのは、素晴らしいと思います。

ーありがとうございました!

海外進出をご検討されているものの、具体的な進め方が不明確なお客様へ。
弊社では、マレーシアにてそば店運営とテストマーケティングが可能な企画展示会スペースを運営しており、会計やマーケティング、店舗開発のスペシャリストを集めた専門チームがお客様の課題解決を支援いたします。

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