【株式会社ひらく 武田健悟氏】
「表現力」が鍵?
日本企業の海外進出を成功させるためのヒント
マレーシア・クアラルンプールで十割そばを提供しながら日本文化の企画展示会スペースを備える店舗「元年堂(がんねんどう)」。静岡の十割そば屋「元年堂」の海外一店舗目として2024年9月にオープン。日本企業やローカルの人々とのコラボレーションイベントなどを多数行い、リピーターを増やしながら『ここでしか味わえない日本の「体験」と「感性」』を発信しています。
今回は、ユニークな本屋「文喫」を手がける株式会社ひらくの取締役であり、カルチャーリンクマレーシア社外顧問CCOとして、マレーシアで新たな挑戦を続ける武田建悟氏にお話を伺いました。異国の地でのビジネスの大変さ、トラブルさえも楽しむ秘訣、クライアントとの共創で大切にしていること、日本企業の海外進出で課題となる「表現方法」について、そして今後の展望について掘り下げていきます。

Culture Link Malaysia. Sdn.Bhd
元年堂の運営母体。マレーシア・クアラルンプールで十割そばを提供する元年堂を運営しつつ、日本企業やアーティストなど日本文化、日本の作品を展示する“ギャラリースペース”を併設。海外進出支援やテストマーケティングのサポートを行っている。
▼元年堂マレーシアクアラルンプール
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登場人物
武田建悟(KENGO TAKEDA)
株式会社ひらく取締役。
2011年日本出版販売株式会社に入社。新規事業部の設立時から、様々な企画や場づくりを担当。2018年、入場料のある本屋「文喫 六本木」をオープン。2021年には百貨店カルチャースクールとの新業態「文喫 福岡天神」を手掛ける。2024年、名古屋市の商業施設中日ビルにて「文喫 栄」を開業。その他、企業ライブラリ「READING ROOM」、原宿ハラカド雑誌の図書館「COVER」、下関ブックホテル「ねをはす」などの案件を手掛ける。
コンセプト開発やビジネスモデル設計といった企画プランニングから、プロジェクト全体の進行管理を行い、様々な外部企業の企画、プロデュースを担当。
・カルチャーリンクマレーシア社外顧問CCO
ー まずは自己紹介とキャリアについてお聞かせください。
武田:
株式会社ひらくの武田です。ひらくは日本出版販売株式会社の会社の100%子会社として設立された会社です。親会社の主な事業は、出版社から本を仕入れて書店やコンビニに卸す取次です。しかし本の需要が減っている状況の中、取次事業だけでは経営が厳しくなってきています。そこで、グループ全体で様々な事業にポートフォリオの多様化を進める必要があり、その戦略の中で「ひらく」が設立され、僕は同社の取締役をさせていただいています。
僕のキャリアとしては、2011年に新卒で日本出版販売株式会社に入社し、最初の2年半は本屋さんに送る本の冊数などを決める仕事をしていました。その後、新規事業部に異動になり、そこで関わっていた新規事業が大きくなり、ひらくにスピンオフしたという流れです。今の企画やプロデュースの仕事は、かれこれ12年ほどになります。
ーひらくさんでは、具体的にどのような事業を展開されているのですか?
武田:
親会社である日本出版販売株式会社は、文具や雑貨の会社やイベント会社、DULTONというインテリア雑貨メーカー、箱根本箱という宿泊施設を運営するASHIKARIなど幅広い事業を展開しているのですが、その中でひらくは本業の取次事業にぶら下がっていており、ベタに「本屋」や「本のある場所」を作っています。
具体的には、入場料のある本屋「文喫」を運営しています。これは「本屋をデザインし直したい」という思いから、本があまり好きでない人や興味がない人でも来てもらえるような本屋さんを目指しました。2018年にオープンし、現在6年目になります。文喫を起点にリアルな交流を行っていく中で、メーカーさんやクリエイターさんとのつながりが増えていきました。そうしたつながりを文喫の店舗以外の形でも還元していけたらと考え、クライアントワークも行っており、下関のブックホテル「ねをはす」の宿泊施設プロデュースや、原宿の商業施設「ハラカド」では雑誌の図書館を作ったりしています。
日本の常識は通用しない!?マレーシアで味わった苦労と面白み
ー元年堂とはどのようなつながりで取り組みが始まったのですか?
武田:
元々、野口(カルチャーリンクマレーシアCOOの野口亮)は日本出版販売株式会社の同僚でした。彼が元年堂を作る際に、「そば屋だけでなく日本の文化を発信する場所を作りたい」という話を持ちかけてくれたのがきっかけです。
ひらくのコンセプトとの相性の良さと感じましたし、僕自身常に楽しい仕事をしたいと思っているので、「面白そうだな」と直感的に思ったのが一番の理由です。
文喫で培ったネットワークもありましたし、日本の文化を発信する場所というコンセプトがひらくと合致していると感じてもらえたようです。ミユキアクリルさんというアクリルメーカーの商品を展示販売する企画を一緒に行ったのが、元年堂での最初の取り組みになりました。
ー海外での企画展のプロデュースは初めてだったそうですが、いかがでしたか?
武田:
そうなんです。今まで日本国内では様々な場所で仕事をしてきましたが、海外での企画展は元年堂が初めてでした。本当に大変でしたね(笑)。言葉が通じないのは仕方ないとしても、日本の常識が通用しないことや、日本ではすぐに手に入るものがなかなか手に入らないことに苦労しました。カインズホームもハンズもないですからね。
当初考えていたことから変更せざるを得ず、現場合わせでなんとか形にするしかない、という感じでした。日本からだと送料もとても高いので、なるべく現地調達で済ませる必要があり、臨機応変に対応しなければなりませんでした。
ひらくが手掛けたシヤチハタ株式会社の展示スペース
ートラブルさえも楽しめているのはなぜなのでしょうか?
武田:
まず異国の地でゼロから始めた野口の志に共感しているからです。せっかく一緒にやるなら、面白い経験にしたいという気持ちが強くあります。それに、「どうやったら海外の人に日本の文化が伝わるんだろう」という部分はまだ手探り状態なんですよね。どうやってマレーシアの人相手に日本の文化を発信していくか、試行錯誤している過程そのものが面白いと感じています。分からないことが多いからこそ、挑戦しがいがあるし、新しい発見もある。そうした状況を楽しんでいます。
海外進出のカギは「表現力」。日本の魅力を最大限に伝えるサポートを
ー日本文化の魅力を海外に伝える際、武田さんが表現において最も大切にしていることはどんなことですか?
武田:
「シンプル」に、「ストレート」に、良さを伝えたいと思っています。そして、お客さんが何か身近に感じられるフックと、手を動かしてやれることを必ず置いておくことを意識しています。
例えば、シヤチハタさんの企画展の例で言うと、ジャーナリングを体験し、展示できるという仕掛けを入れました。ただハンコを置いてハンコの文化を知ってもらうだけでは響かないと思ったんです。マレーシアではジャーナリングが密かなブームになっていることを知ったので、ジャーナリングに興味を持ち、試しにやってみようとなり、その商品がたまたまシヤチハタという日本のメーカーのものだった、という風に繋がったらいいなと。遊べる要素や共感できる要素を入れることは大事にしています。
シヤチハタさんの展示会場では、ジャーナリングが体験できるスペースを用意
ー来場者の興味を惹きつけるフックとして、どのような工夫をされていますか?
武田:
まずは子供たちをきっかけとして、「行きたい、行きたい!」と子供たちが親御さんの手を引っ張って来てくれれば自然と人が集まり、良い空間になると思います。なので、今回のシヤチハタさんの展示の例で言うと、単にハンコの重ね捺し技術を展示するのではなく、子供たちが興味を持つカードゲームの要素を取り入れました。
子供向けに特化しすぎると単なるキッズスペースになってしまうので、「大人の視点から見ても面白く、子供から見ても楽しい」というバランスを、商品をうまく活用しながら考えることが重要だと思います。特に海外では、このバランス感覚が非常に大切だと感じています。
ークライアントさんとの連携で特に意識していることはありますか?
武田:
クライアントさんと僕たちで一緒に作り上げる企画なので、相手方の熱量は非常に大事だと考えています。この部分は企画の出来にも大きく関わってくる部分なので、僕たちが一方的に主導するのではなく、クライアントさんにいかに熱量を持って入り込んでもらい、一緒に考えてもらうかを大事に進めています。
ーこれからマレーシアに進出したいと考えている日本企業に向けて、何かメッセージはありますか?
武田:
日本の企業さんは本当に素晴らしい技術や商品を持っていると思います。品質も高いし、ものづくりに対するこだわりもすごい。日本という国自体が、海外から見ると素晴らしいブランドなんです。ただ、それをどう届けていくか、どう表現していくか、という部分が課題になることが多いように感じます。
日本の企業さんは、どうしても綺麗にまとめようとしがちなんですよね。でも、もっとラフな感じでも良いんじゃないかなと。もっと自由に、いろんな表現方法を使って、日本の良さを伝えていけば良いと思います。僕たちは、いろんな表現方法を知っていますし、いろんなネットワークも持っているのでもしそういう部分で何か課題を感じているのであれば、ぜひ一度ご相談いただきたいですね。
ー今後の展望について教えてください。
武田:
元年堂の(企画展示会)スペースがどうなっていくか、本当に楽しみです。企画展と蕎麦屋のフィット感がちゃんと現れるといいなと思っています。まずは「面白そう」ということで来て下さるだけで嬉しいのですが、そこにとどまらず、集客やリピーター獲得に繋がっていければ最高です。
ーありがとうございました!
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弊社では、マレーシアにてそば店運営とテストマーケティングが可能な企画展示会スペースを運営しており、会計やマーケティング、店舗開発のスペシャリストを集めた専門チームがお客様の課題解決を支援いたします。
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