シヤチハタ、マレーシアで新たな挑戦!
創業100周年を機に「さあ、もう一旗(ハタ)。」
マレーシア・クアラルンプールで十割そばを提供しながら日本文化の企画展示会スペースを備える店舗「元年堂(がんねんどう)」。静岡の十割そば屋「元年堂」の海外一店舗目として2024年9月にオープン。日本企業やローカルの人々とのコラボレーションイベントなどを多数行い、リピーターを増やしながら『ここでしか味わえない日本の「体験」と「感性」』を発信しています。
今回はマレーシアで事業を行う方のリアルな声をお届けすべく、マレーシアに拠点を置くシヤチハタマーケティング代表加藤さんにお話を伺います。シヤチハタは今年、創業100周年という大きな節目を迎えます。60年前からマレーシアに進出し、ローカル企業がシヤチハタの代わりに営業を行う、代理店営業で販路を拡大してきた同社が、今なぜダイレクトマーケティングという新しい販売方法に挑戦するのか。そして現地インフルエンサーと共同での商品開発についてなど、今後の展望を伺いました。

Culture Link Malaysia. Sdn.Bhd
元年堂の運営母体。マレーシア・クアラルンプールで十割そばを提供する元年堂を運営しつつ、日本企業やアーティストなど日本文化、日本の作品を展示する“ギャラリースペース”を併設。海外進出支援やテストマーケティングのサポートを行っている。
登場人物 加藤領一(YOSHIKAZU KATO)さん
Shachihata Marketing (Malaysia) Sdn. Bhd. CEO
シヤチハタ株式会社海外営業部
1984年生まれ、名古屋市出身
シヤチハタ株式会社海外事業部アジア中東担当を経て、2023年にShachihata Marketing (Malaysia)を設立。
南山大学卒業後、シヤチハタ株式会社の海外事業部の代理店営業業務を通じてダイレクトマーケティングの必要性を感じ、2020年にマレーシア法人に出向、シッピング業務を経て2023年にShachihata Marketing (Malaysia)よりマレーシア主要ECプラットフォームにてオフィシャルストア開設。
EC以外にはデジタル、フィジカルに関わらずユーザー目線のマーケティングを念頭にマーケティング業務にも注力し、日系企業、ローカル企業とのコラボレーションも積極的に行っている。
ーまずは自己紹介をお願いします。
加藤:
シヤチハタ株式会社およびシヤチハタマーケティングの加藤です。現在、マレーシアでシヤチハタマーケティングという会社を立ち上げ、営業拠点を一から作っています。
ーありがとうございます。シヤチハタマーケティングさんのマレーシア拠点立ち上げの経緯について教えてください。
加藤:
シヤチハタ本体のマレーシア進出は60年ほど前で、当時から海外拠点では一国一代理店制を採用し、ローカル企業と協力しながら販売を行ってきました。しかし、消費者の価値観の多様化とともに一緒に一から頑張っていくというフェーズが終わり、代理店も世代交代がなされる中で関係性が変化してきました。
弊社としては、代理店と共にこれまで培ってきたものを守り続けることも大切にしながら、ダイレクトマーケティングという新しい販売方法にリスクを取ってでもチャレンジしたいという想いがありました。
シヤチハタマーケティングは、こうした経緯で新たな取り組みを行うために設立され、今後は東南アジアの営業拠点を担う可能性も持っています。
マレーシアで得た成功を、世界へ
ー実際にマレーシアでダイレクトマーケティングを行った手応えはいかがですか?
加藤:
アメリカや中国と比較すると、マレーシアの文房具需要はまだまだ高くないですが、予想以上の反響をいただいています。既存の代理店がディスカウント価格で販売している中で、定価販売の我々が受け入れられるか不安でした。しかし、実際には「オフィシャルショップだから信頼できる」という理由で購入してくださるお客様が多く、驚いています。
ーそれは興味深いですね。特にどんな層のお客様が多いのでしょうか?
加藤:
個人のお客様もいらっしゃいますが、中小企業の経営者の方々が、会社の経費で購入されるケースも多いです。「経費で買うならオフィシャルショップで」という考えがあるようですね。また、カフェなどのお店も同様です。
ー御社の商品戦略の特徴について教えてください。
加藤:
一般的に、多くの企業は日本で売れている商品を海外展開しますが、シヤチハタは少し違います。日本では捺印具が主力ですが、海外では筆記具の売り上げが9割以上を占めています。判子は日本独特の文化であり、スタンプ台も価格帯や競合の多さから難しいと考えていたためです。一方、筆記具は海外でのニーズも高く、価格競争力もあるため、この売り上げ構成比に落ち着いていました。
ーなるほど。今回のダイレクトマーケティングでは、どのような戦略を取られたのでしょうか?
加藤:
一番売れている筆記具などの商品は、他の代理店のお客様がディスカウント価格で販売するため、定価販売のオフィシャルショップでは価格競争力がありません。そこで、日本でしか売られていない商品に目をつけました。これらの商品は、マレーシアではエクスクルーシブな商品として、むしろ少し高い価格で販売しています。
ー日本限定の商品が好評だったのですね。
加藤:
はい。オンラインだけでなく、オフラインイベントにも出展し、実際に商品を手に取っていただく機会を作りました。すると、『いろもよう』などの日本では一般的な商品が、マレーシアでは非常に人気があることがわかりました。並行輸入業者からや、日本へ旅行した際にご購入いただいたお客様が多く、既にニーズがあったんです。オフィシャルショップで直接購入できるようになったことで、非常に喜んでいただけました。
ーそれは素晴らしいですね。
加藤:
この成功事例を受けて、中国や欧州など、他の地域でも日本限定の商品を展開する動きが出てきました。見えないニーズを可視化し、マレーシアを起点に新たな市場を開拓できたことは、大きな成果です。
現地インフルエンサーと、共に行う商品開発
左上から/シヤチハタ株式会社海外事業部 粟津さん・株式会社ひらく 清原さん
Sumthings of Mine ジャスミンさん、ティンさん〈Sumthings of Mine Instagram〉
左下から/Shachihata Marketing (Malaysia) Sdn. Bhd. CEO 加藤さん・株式会社ひらく 取締役 武田さん
ーシヤチハタマーケティングさんの今後の展望について教えてください。
加藤:
先日開催したジャーナリングイベントでも、現地で活動するインフルエンサーさん達にお越しいただきましたが、今後は一緒に商品開発なども進めていきたいと考えています。
ーインフルエンサーとの協業にはどのようなメリットがあると感じていますか?
加藤:
私たちは資金はあるもののアイデアが少ない。一方、インフルエンサーさん達はアイデアは豊富だけれど資金が少ない。
そこで、お互いの弱みを補填し強みを生かすことで、互いにメリットのある関係が築けると思っています。自分たちで作った商品なので、広告費をかけなくても積極的に宣伝してもらえるでしょうし、非常に良いモデルだと感じています。
ー具体的に、どのような商品を作っていく予定ですか?
加藤:
基本的にはゴム印やマスキングテープ、ステッカーなどです。これらの商品は、性能や品質自体はシンプルですが、一番大事なのはソフトの部分、つまりアイデアです。何をハンコにするか、何をステッカーにするかというコアな部分を、一緒に綿密に考えていきたいと思っています。
また、スタンプにしてもステッカーにしても、シリーズ化することが重要だと考えています。シンボルとなるようなキャラクターやテーマを作り、シーズンごとに第2弾、第3弾と展開していければ、継続的な人気に繋げられると思っています。
ー今回の取り組みは、御社にとってどのような意味を持つのでしょうか?
加藤:
明らかに今までの代理店営業とは異なる新しい挑戦で、非常にワクワクしています。今後は、この取り組みを趣味レベルで終わらせるのではなく、会社のバックアップを受けながら、売り上げにも繋げて、事業として成功させることが私の使命であり目標です。
ーありがとうございます。創業100周年の節目となるシヤチハタさんの海外展開に注目しましょう!
※「シヤチハタ100周年イベントを終えて」は、6月以降公開予定!
海外進出をご検討されているものの、具体的な進め方が不明確なお客様へ。
弊社では、マレーシアにてそば店運営とテストマーケティングが可能な企画展示会スペースを運営しており、会計やマーケティング、店舗開発のスペシャリストを集めた専門チームがお客様の課題解決を支援いたします。