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次はシンガポール、中国へ。
元年堂を起点に広がる「伝統 × 挑戦」
— 海外展開とマーケティングの裏側 —
株式会社ezu

業界・業種
アパレル(群馬県桐生市草木染めブランド)
感じていた課題
・海外進出の方法が分からず、市場のニーズや好みを把握できていなかった。
・大規模な海外展開はリスクが高く、まずは小規模で市場反応を試したかった。
支援結果
・元年堂のギャラリースペースを活用し、リアルな現地の声を収集。
・展示や販売を通じて、デザインや色の好みに関する貴重なフィードバックを得た。
・現地バイヤーやメディアの注目を集め、新たな販路開拓のきっかけを得た。
提供サービス
・現地ギャラリースペースでの展示・販売支援
・ターゲット層の市場調査とフィードバック提供
・ローカル市場に適した販売戦略のアドバイス
・ブランディング強化のためのPR・プロモーション支援

日本発のアパレルブランド「ezu(エズ)」と、マレーシア・クアラルンプールで十割そばを提供しながら日本文化のギャラリースペースを備える店舗「元年堂(がんねんどう)」。 一見まったく別のフィールドに立つ両者ですが、実は「日本の伝統文化やものづくりを、もっと広く海外に伝えたい」という強い共通項を持っています。そんな二つのチームがコラボレーションを行い、話題を集めているのをご存じでしょうか。 なぜ両者が力を合わせると、新しい形の日本発信が生まれるのか。今回、その試みの詳細やお互いへの思い、そして今後の展望について対談していただきました。

株式会社ezu

群馬県桐生市を拠点とするアパレルブランド。
手描きの図案(絵図)からオリジナルのテキスタイル(布)をつくるところからはじめ、縫製、染色といった職人技術を活かした一点物の服づくりが特徴。
https://www.ezu.garden/

Culture Link Malaysia. Sdn.Bhd

元年堂の運営母体。マレーシア・クアラルンプールで十割そばを提供する元年堂を運営しつつ、日本企業やアーティストなど日本文化、日本の作品を展示する“ギャラリースペース”を併設。海外進出支援やテストマーケティングのサポートを行っている。

登場人物

岩野 久美子:株式会社ezu / Chief Design Officer)

野口 亮:Culture Link Malaysia / Chief Operating Officer)

西島 英弘:Culture Link Malaysia / Chief Executive Officer)

インタビュアー

平岡 謙一:株式会社ezu / Chief Operating Officer , Culture Link Malaysia / Chief Marketing Officer

お互いの活動・ブランド背景

平岡:まずは「ezu」の活動内容をあらためて教えてください。

ezu(岩野): 私たち「ezu」は、群馬県の桐生市というところでアパレルブランドを運営しています。桐生市は1300年の織物の歴史があるといわれるほど、染織や縫製の技術を深く受け継いできた地域なんですね。
そこで培われた職人技を最大限に生かして、1着ごとに糸や染めを変え、ほぼすべて一点物の服を作り続けています。私自身も、デザインの原点となる“手描きの図案”を描き、それを生地に落とし込み、地元の縫製職人さんと協力しながら仕上げていくんです。
服って、人の身体に最も近い“外側”にあって、同時にその人の気分や気持ちに大きく作用するものだと私は考えています。ですから、着る人の「自分らしさ」をちょっとだけ後押しできるような、いわば“お守り”のような服にしたいという思いでやってきました。

平岡:日本国内で多くのファンを獲得されていますね。そんなezuが海外へ目を向けるきっかけは何だったのでしょう?

ezu(岩野):私はもともと、海外のファッションショーや展示会で作品を発表する機会が何度かありました。でも、まだまだ自分たちの服がどう受けとめられるか、実際にどんな方々が興味を持ってくれるのかが、よくつかめない部分があったんです。
海外進出といっても、いきなり大きな店舗を出すのはリスクが高いですよね。現地での嗜好や文化的背景のリサーチ不足だと、せっかく出した店が上手く回らなかったりする。もっと気軽にテストしてみたいという想いが常にありました。そんな中、「マレーシアで日本の伝統を発信する蕎麦屋さんがある」と話を聞いて興味を持ったわけです。

平岡:次に元年堂チームに質問です。そもそもマレーシアで「十割そば」を展開しながら、ギャラリースペースを設けるという発想はどのように生まれたのでしょうか?

元年堂(野口):私たちが拠点としているマレーシア・クアラルンプールは、いま人口が増え続けていて、平均年齢が20代後半ととても若い国なんですね。多民族・多宗教が混在することで、多様な文化が日常的に存在しますし、英語も通じやすい。いわゆる「ASEANのハブ」といわれるほどビジネスの動きが活発です。
そこへ“日本文化”をどう根付かせるかを考えたとき、まずは「日本食」なら興味を持たれやすいだろう、と。さらに「そば」という選択は、まだマレーシアに定着していない分、インパクトを出せると思ったんです。
同時に、「日本文化全般を体感できる場所」にしたい気持ちもありました。そこで、店の入口にギャラリースペースを設け、毎月テーマを変えながら日本企業やアーティスト、伝統工芸を紹介していくスタイルを始めたんです。

平岡:なぜ“ギャラリー”という形を採り入れたのでしょう?

元年堂(野口):日本の企業や職人さんの中には、「海外にチャレンジしてみたいけれど、現地の反応が不透明だから不安」と考える方が少なくないんです。私たち自身も“地方の中小企業が海外に出る難しさ”を痛感してきました。
それなら一歩手前で、“展示してお客様の反応を伺う”機会があったら便利ではないか。さらに、お蕎麦を食べに来る方は、日本に興味を持っている人や在住の日本人、または観光で立ち寄る外国の方など、さまざまです。そうした多様なお客様の意見を聞くことができるので、出展企業さんにとってはリアルなテストマーケティングができる場所になるんじゃないかと考えたんです。

コラボのきっかけと進め方

平岡:そんな構想の中で、どのようにして「ezu」とのコラボが始まったのか教えてください。

元年堂(野口):きっかけは弊社の役員でもある平岡さんから「日本の伝統技法にこだわった面白いアパレルブランドをやっているから、コラボとかできない?」というお話をいただいたことでした。実際にezuさんの作品を拝見してみると、テキスタイルの使い方や一着ごとに異なる表情をもつ服に、すごく惹かれたんです。
「日本の手仕事や染織技術」をしっかり活かしたうえで、現代的なデザインが融合している。この“日本らしさ”と“オリジナリティ”は、海外の方々にも面白いと感じてもらえるだろうなと。そこでまずは展示スペースを使ってみませんか、とお声がけしました。

ezu(岩野): 私の側でも、平岡さんから「元年堂」という名前を聞いたとき、最初は「マレーシアの蕎麦屋さん?」くらいのイメージだったのですが、詳しく聞くと「日本文化を発信する空間」になっていると。しかもスタッフの方々が本気で“日本からの挑戦を応援したい”という想いを持っていて、そこに強く惹かれました。
実際、服を展示するだけでなく、ユニフォームの共同製作もやりませんかと提案していただいたんです。
飲食とアパレルがコラボするのは非常に珍しいですけれど、やってみると実に相性がいい。スタッフさんが着るユニフォームが“藍染・草木染の一点物”というのも面白いですよね。

11月からの企画展は、草木染めで世界から注目を集めるアパレルブランド「ezu」 (https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000130255.html)

実際に始まったコラボと反響

平岡:具体的に展示ルームを使ってみて、両社にはどのような変化や成果があったのでしょう?

ezuサイドが感じたメリット

ezu(岩野): まずは、現地の方からリアルな声が届くことですね。たとえば「マレーシアの方はムスリムの方も多く、動物や人の顔がはっきり描かれたモチーフはあまり好まれないかもしれない」など、インターネットで調べるだけでは得られなかった知見がありました。
それから「マレーシアは緑色がナショナルカラー的に好まれやすい」という情報も教えていただいたので、実際にグリーン系の生地や柄を強化すると売れ行きが変わったりして、「なるほど本当に好まれるんだ!」と驚いたんです。

さらに、店頭で作品に出会ったシンガポールのキュレーターさんから別の展示のオファーがあったり、現地インフルエンサーが「面白い服がある」とSNSで発信してくれたり。これらは元年堂さんの場所がなければ起こり得なかったご縁だと思っています。

元年堂サイドが得た手応え

元年堂(野口): 蕎麦店としては、もちろん日本食を提供するのが本業ですが、“日本文化をもっと知りたい”という来店動機を持った方が増えたと感じます。店の入り口でezuさんの服やテキスタイルを見て、「こういうのが日本の伝統技術なんだ」と興味を深めてくださるんですよね。
また、弊社のスタッフ自身がezuさんのユニフォームを着用することで、職人の手技やデザインの素晴らしさを肌で体感しています。「自分たちは単にそばを提供しているだけじゃなく、日本の文化を“着る”形でも表現しているんだ」というモチベーションが高まったように思います。
その結果、スタッフ同士で自然に「今月の展示スペースはどんなブランドさんが来るんだろう?」と話し合うようになったり、企画そのものを自発的に盛り上げようとしてくれるんです。これは、お店全体の価値が上がったと感じる、大きな変化ですね。

「テストマーケティング」の重要性

平岡:両者のお話を伺うと、今回のコラボは「テストマーケティング」という意味合いが強いようです。改めて海外進出に向けたテストの大切さをどうお考えですか?

ezu(岩野): 海外に挑戦しようとすると、普通は現地に拠点を作るとか、大きめのイベントに出展するとか、コストも労力も一気に跳ね上がりますよね。ただ、いきなりそこで失敗したら、大きなダメージになります。
その点、元年堂さんのギャラリーを使わせていただく形なら、比較的コンパクトなコストで“実際の来店客の反応”をリサーチできます。しかも、そこで得たフィードバックをすぐに自社の制作に生かせるので、次の打ち手を打つスピードが上がるのが本当に助かるんです。

元年堂(野口): 私たち自身、中小企業として海外進出の難しさを痛感してきたからこそ、この形を考案したところはあります。
マレーシアの当店には、多民族・多文化・多宗教の方がやってきますし、日本人コミュニティも一定数いる。そこでの動向を追えば、マレーシア市場だけでなく、周辺のインドネシアやシンガポールなど、東南アジア全体に向けた手応えも推察しやすいんです。
「これからASEANに出たいけれど、どう動けばいいかわからない」という日本企業さんには、一度“足がかり”として活用していただき、そこから大きく羽ばたいてほしいという思いがあります。

今後の展望とお互いへの期待

平岡:それでは、今後の展開やお互いに対する期待を教えてください。

ezuの展望

ezu(岩野): 今、私たちはシンガポールや他のアジア各国でも“日本の手仕事”を活かした作品をもっと知ってもらえないか、という検討を始めています。元年堂さんで得た反応やスタッフさんの声、コラボユニフォームの手応えなどを踏まえて、色彩やデザインの面でも新しいチャレンジをしてみたいんです。
たとえば、宗教的に着られないアイテムもある一方で、「こういうものなら大丈夫」と提案してくれるローカルスタッフの方がいるのは非常に心強いです。そういった実践的なアイデアをさらに取り込みながら、海外へ積極的に打って出たいですね。
今後もタイアップ企画や新作の発表など、また元年堂さんと連携して“マレーシアの地でリアルにお披露目する”機会をつくれたら嬉しいです。

元年堂の展望

元年堂(西島): 私たちはこの先、東南アジアの他国への展開も構想しています。もし他都市や他国で新たに出店する機会があれば、今回のようなギャラリースペースは必ず作りたいと考えています。
ezuさんのように、“日本発の素晴らしい技術やブランド”をお持ちなのに海外での販路開拓に苦労されている企業はまだまだ多いと思うんです。そこを我々がハブとなって繋ぎ、実際にリサーチができる場所を提供する、そうした流れをもっと拡大していきたいですね。
いずれはマレーシア以外のASEAN諸国、さらに欧州などでも“日本文化を体験できる蕎麦店”+“日本企業の展示スペース”が当たり前に広がる未来を夢見ています。それくらい大胆に描かないと、なかなか多くの企業さんの背中を押せないですから。

まとめとメッセージ

平岡:最後に、読者へのメッセージをお願いします。

ezu(岩野): 海外進出と聞くと、大企業の事業拡大というイメージを持たれるかもしれません。でも、私たちのような中小規模のアパレルブランドでも、今回のように一歩踏み出す方法はあります。
日本国内で培われた技術やデザインは、海外の人たちにも響くものだと今回改めて感じました。まずは勇気を出して、現地へ飛び込んでみる、その際に元年堂さんのような“現地の方と一緒になって応援してくれる場所”があるのは非常に心強いです。
もし「うちの製品も海外で通用するだろうか」と迷っている方がいたら、一度相談してみる価値は大いにあるんじゃないかと思います。

元年堂(野口): 当店では、これからも定期的に新しい展示の企画を行い、日本企業の方々にお試しいただける場を拡充していきます。視察ツアーの企画も準備中で、“ちょっとマレーシアの空気を吸ってみたい”“現地の人に実際に会いたい”という方々を現地でご案内する予定です。
「マレーシアでそばを食べながら、日本発の優れたものづくりを見られる場所」
これをきっかけに、世界へと繋がっていく企業や商品が増えれば、私たちとしても本望です。何か一つでも興味があれば、ぜひ気軽にお問い合わせいただきたいと思います。

平岡:本日はありがとうございました。

まとめ

両者のコラボレーションによって、ezu側は実際の現地需要をリアルに把握でき、元年堂側は独自の日本文化体験をいっそう強化する形となりました。“飲食とファッションの組み合わせ”と聞くと意外に思われるかもしれませんが、実際には「日本らしさを海外に発信したい」という熱い思いが双方を繋ぎ、新しい試みを次々と生み出しているのです。

これから先、さらに広がるマレーシアや東南アジア、そして世界への道。ezuと元年堂の対談は、「国内外の垣根を超えた日本の技術・文化の融合」を感じさせる、示唆に富むエピソードとなりました。
今後の展開にも大いに注目が集まります。