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「教室では学べない」を求めて。
未来の管理栄養士が挑んだマレーシア研修のリアル
東海学園大学 健康栄養学部 食品開発専攻

業界・業種
教育機関・大学(愛知県/管理栄養士養成・食品開発専攻)
感じていた課題
・管理栄養士を目指す学生に、栄養学だけでなく「食品業界・開発」の広い視野を持たせたい。
・インバウンドや海外進出が進む中、机上の空論ではない「ハラール文化」を肌で感じさせたい。
・ただの観光旅行ではなく、学生の将来(就職・キャリア)に直結する、学びと刺激のある研修先を
 探していた。
・学生の海外研修離れを防ぐため、魅力的なプログラム構築が必要だった。
支援結果
・食品開発専攻の学生25名が参加。「ハラール=厳しい」という先入観が「柔軟な共存」という
 リアルな理解へ変化。
・現地市場での「生きた鶏」や「価格差(シャインマスカット)」の体験が、マーケティングの
 生きた教材となった。
・言葉の壁をスマホ(SNS・翻訳アプリ)で軽々と超える「Z世代のコミュニケーション力」を再発見。
・次年度以降の「商品開発×マーケティング実践」という新しい研修の軸が見えた。
提供サービス
・現地運営店舗『元年堂』における実地視察・バックヤード見学
・現地市場のリアルを伝える『マレーシア進出・実務セミナー」
・展示の見学・体験・現地市場(中華系・マレー系・インド系)および大学(INTI大学)の
 視察コーディネート
・多民族(中華・マレー・インド系)現地スタッフとの座談会・ダイレクトコミュニケーション
・今後の「商品開発×マーケティング研修」に向けたプログラム提案

東海学園大学 健康栄養学部 食品開発専攻

東海学園大学 健康栄養学部は、「からだと食の関係を科学的にとらえ健康な社会づくりに貢献する」ことを目指します。 管理栄養士専攻と食品開発専攻の2専攻があり、得意分野を持つ管理栄養士や食のトータルプロデューサーを養成。
https://www.tokaigakuen-u.ac.jp/academics/health_nutrition/

Culture Link Malaysia. Sdn.Bhd

元年堂の運営母体。マレーシア・クアラルンプールで十割そばを提供する元年堂を運営しつつ、日本企業やアーティストなど日本文化、日本の作品を展示する“ギャラリースペース”を併設。海外進出支援やテストマーケティングのサポートを行っている。

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▼元年堂マレーシアクアラルンプール
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「食品開発専攻」が目指す、これからの管理栄養士像

野口(元年堂):
本日はお時間ありがとうございます。まず、今回の研修の背景についてお伺いしたいのですが、そもそも管理栄養士の養成課程の中に「食品開発専攻」があるというのは珍しいですよね?

中出(東海学園大学):
そうですね、ほとんどないと思います。管理栄養士のカリキュラムは非常にタイトなので、そこに「食品開発」の要素を組み込むのは大変なんです。でも、あえて作ったのには理由があります。食品メーカーや企業の方々から、「若い世代の視点やアイデアが欲しい」「今の時代に刺さる商品を考えられる人材がいないか」という相談を頻繁に受けるようになったからです。

野口:
なるほど。栄養学の知識を持ちつつ、マーケティングや商品企画もできる人材へのニーズが高まっていると。

中出:
はい。栄養士としての就職先は病院や委託給食会社がメインですが、食品メーカーに就職して開発に携わる道も広げたい。そのためには、単に美味しいものを作るだけでなく、パッケージデザインやメディア発信、マーケティングまで含めた「開発」を学ぶ必要があります。その一環として、2年生の必修で「学外実習」を行っており、国内の食品工場へ行くコースか、アジアを中心とした「海外研修」かを選べるようにしています。

野口:
そこで今回は25名の学生さんが海外、つまりマレーシアを選んだわけですね。

座学の「ハラール」vs 現場の「リアル」

野口:
昨今はベトナムやフィリピンなども研修先として人気ですが、今回マレーシアを選ばれた決め手は何だったのでしょうか?

中出:
一番は「多様性」です。マレー系、中華系、インド系が混ざり合っている面白さがあります。もう一つは、これからの日本の食品業界において避けて通れない「ハラール(イスラム教の戒律)」や「インバウンド対応」を学ぶのに最適だからです。愛知県も外国籍の住民が増えていますし、将来、管理栄養士として働く上で、多様な宗教や食文化への理解は必須スキルになりますから。

野口:
実際に行ってみて、学生さんの「ハラール」に対する反応はどうでしたか? 事前の座学だと、「戒律が厳しくて大変そう」というイメージを持たれがちですが。

中出:
そうなんです。行く前は「ガチガチに厳しいのかな」と思っていた学生も多かったと思います。でも現地に行ってみると、ヒジャブを被った方もいれば被っていない方もいる。お酒を出す店もあれば、ハラール対応の店もある。それらが喧嘩することなく、緩やかに共存している風景を目の当たりにしました。学生たちも「あ、これくらい緩やかでも許されるんだ」「意外と普通に生活の中に溶け込んでいるんだ」と、肌感覚で理解したようです。

野口:
そこが大事ですよね。「ハラール=制限」ではなく、「共存のためのルール」だと気づけるのは、現地に行ったからこそだと思います。

中出:
INTI大学(現地の大学)のホスピタリティ学科を訪問した際も、ハラール対応の調理実習を見せてもらったり、一緒に食事をしたりしました。学生たちにとって「食」は共通言語なので、全く違和感なく受け入れていましたね。

野口:
学生さんには「元年堂」のメニューも食べていただきましたが、反応はいかがでしたか?

中出:
ここでの体験は非常に大きかったようです。多くの学生がアンケートで「日本で食べる蕎麦と味が変わらないことに驚いた」「使えない食材(豚やアルコール由来の調味料など)が多い中で、ここまで美味しくできる工夫に感動した」と答えていました。
ハラール対応というと「味気ない」「制限が多い」と思われがちですが、実際には現地の好みに合わせた「スパイシーとり天蕎麦」などもあり、制限の中でいかに楽しんでもらうかという創意工夫に触れることができたようです。

野口:
「日本食=美味しい」を海外で維持する難しさと、現地の人のために工夫する姿勢を感じて頂けたのですね。

中出:
ええ。学生からは「ハラール認証を取るまでの苦労を知れた」という声もありました。単に食べるだけでなく、ビジネスとして海外で日本食を展開する現場のリアルな難しさと面白さを知ることができたと思います。

野口:
素晴らしいですね。食事以外の面では、学生たちはどのような感想を持っていましたか? 初めての海外という学生も多かったと思いますが。

中出
街のエネルギーや人の温かさに触れて、とても刺激を受けたようです。例えば、市場の活気や、様々な民族衣装が行き交う風景を見て「国が違えばこんなにも違うのだと肌で感じた」という声がありました。 特に印象的だったのは「人がとても優しくてフレンドリー」「言葉が通じなくても笑顔で接してくれた」という感想です。日本とは違う環境や文化の中に飛び込むことで、逆に人の温かさやコミュニケーションの大切さに気づけたようですね。

野口:
まさに現地に行かないと味わえない「異文化体験」ですね。

中出
おっしゃる通りです。「調べただけではわからないことばかりだった」「自由時間に自分たちで街を歩いて楽しかった」という感想も多く、教室の中だけでは得られない自信がついたように感じます。 日本との違いをただ驚くだけでなく、その違いを「面白い」「楽しい」とポジティブに受け止めて視野を広げてくれたことが、今回の研修の一番の成果だと思います。

Z世代は「言葉の壁」をスマホで超える

石川(元年堂 マレーシア現地責任者 ):
私が現場で見ていて印象的だったのは、学生の皆さんのコミュニケーション能力の高さです。英語が流暢な子もいれば、そうでない子もいましたが、現地の学生さんやスタッフとすごく楽しそうに交流していましたよね。あれはどうやって会話していたんでしょうか?

中出:
私も不思議に思って聞いたんです。「あなたたち、どうやって喋ってるの?」って(笑)。そうしたら「これこれ!」ってスマホを見せてきて。翻訳アプリを使ったり、その場でInstagramのアカウントを交換してDMでやり取りしたり。

野口:
さすがZ世代ですね!

中出:
「インスタ交換したよ」「今度ここ行こうって誘われた」なんて報告もあって。私たちが心配するような「言葉の壁」なんて、彼らにとってはスマホ一つで飛び越えられるハードルだったようです。マレーシアは親日的な国ですし、現地の方もフレンドリーなので、学生たちも萎縮せずに飛び込んでいけたんだと思います。

市場の「鶏」と「シャインマスカット」の衝撃

野口:
研修中、特に学生さんの反応が良かった、あるいは衝撃を受けていた場所はありますか?

中出:
「市場(マーケット)」の視察は強烈だったようです。近代的なショッピングモールがある一方で、ローカルのウェットマーケットに行くと、生きた鶏がカゴに入って売られていたり、その場で絞めていたりする。「命をいただく」という食の原点を、あの生々しい熱気の中で感じたのは良い経験でした。

野口:
あのギャップはマレーシアならではですよね。

中出:
あと面白かったのは価格差ですね。「先生、見て!」って言われて見ると、市場ではシャインマスカット(のようなブドウ)が300円くらいで売っている。でも、高級モールに行くと日本のちゃんとしたシャインマスカットが数千円で売られている。「同じブドウでも、売る場所とターゲットが変わればこれだけ価値が変わる」というのを、身をもって体験していました。これはまさにマーケティングの勉強ですよね。

石川:
バトゥ洞窟(ヒンドゥー教の聖地)でのエピソードも面白かったですよね。

中出:
ああ、あれですね(笑)。最終日で一番暑い日だったんですが、272段の階段を登るかどうかで意見が割れまして。男子学生は「絶対登りたい!」と言って、汗だくになりながらスポーツ選手みたいにダッシュで登っていったんです。一方で女子学生の一部は、「暑いし、汗かいたまま深夜便の飛行機に乗るの嫌だ」「猿がいるから怖い」と言って、バスから一歩も出てきませんでした(笑)。

野口:
あはは(笑)。それもまたリアルな反応ですね。でも、そういった「予想外」も含めて海外研修の醍醐味だと思います。

次なる一手:「見学」から「実践・共創」へ

野口:
今回は「視察・見学」がメインでしたが、お話を聞いていると、次はもっと踏み込んだプログラムができそうですね。

中出:
そうですね。ただ見るだけでなく、半日くらい腰を据えて「何かを作り上げる」「体験する」要素を入れたいと思っています。例えば、ベトナム研修の時は「カカオからチョコレートを作る」という体験をしたんですが、ああいう手を動かす時間は学生の満足度が高いんです。

石川:
それなら、「マーケティング体験」はいかがでしょうか。以前、中華系インフルエンサーに動画を投稿してもらったら、翌日から行列ができて1ヶ月で2000人以上が来店したことがありました。マレーシアは日本以上のSNS大国です。学生さんに「この商品を現地の人に売るならどう発信する?」という課題を出して、実際にスマホで動画を作って投稿してもらい、反応数を競うとか。

中出:
それは面白い! 今の学生にぴったりです。実は、研修は「行って終わり」ではなく、事前の準備期間が重要なんです。日本にいる間に「マレーシア向けのおやつを1品考案する」とか「パッケージを考える」といった課題を出して、現地で答え合わせをする。そうすれば、毎年同じマレーシアに行っても、学年ごとに違うテーマに取り組めるので、研修としての質がどんどん上がっていきます。

野口:
ぜひやりましょう。日本で学生さんが考えたレシピやアイデアを、私たちが現地のスタッフと相談してブラッシュアップし、実際にテスト販売してみる…なんてことも可能です。「自分が考えた商品が海を越えて売れた」という経験は、学生さんの人生を変える自信になるはずです。

【編集後記】

「学生を集めるためには、研修が『楽しい』かつ『学びになる』と可視化することが大事」と語る中出先生。スマホを片手に軽やかに国境を越える学生たちと、それを受け止めるマレーシアの懐の深さ。次回の研修では、単なる視察を超えた「商品開発×マーケティング」の実践プログラムが動き出しそうです。

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