「あえて高価格」で大反響!
焼津の食品サンプル工場がマレーシアで証明した体験型コンテンツの力
有限会社葵サンプル 様
- 業界・業種
- 製造業・観光業(静岡県/食品サンプル製造・販売・体験型ワークショップ運営)
- 感じていた課題
- ・静岡空港を利用するインバウンド(訪日外国人)が県内を回遊せず、素通りしてしまうため、焼津へ誘客するための魅力的なきっかけを探していた。
・海外展開の経験が全くなく、自社の食品サンプルがマレーシア市場でどのような層に、どの価格帯で受け入れられるのか未知数だった。
・職人が手作業で作る商品の「ブランド価値」や「日本の技術力」を、安売りすることなく海外の顧客へ正しく伝えられるか不安があった。
・完成品の販売だけでなく、「自分で作る(DIY)体験」の価値が、海外の消費者にどこまで響くのかを検証したかった。
- 支援結果
- ・マレーシアの富裕層エリアにおいて、あえて日本(東京)と同等の高価格帯に設定したにもかかわらず、教育熱心なファミリー層を中心にDIYキットが多数売れ、「体験価値」への高い需要が証明された。
・現地のプロのパティシエがワークショップに参加し、細かい組み立て作業に苦戦するなど、日本の精巧な「手仕事」のレベルの高さをリアルに体感させることに成功した。
・飲食店向けのディスプレイにとどまらず、AI検品用のテストモデル、食品EXPOでの展示、キッチン用品店での見栄え向上など、海外における食品サンプルの「無限の用途」と新たなB2B市場の可能性を発見した。
・「未知の海外市場でテストマーケティングをやり切った」という実績が企業としての大きな自信に繋がり、今後の海外展開や大型イベント出店へのハードルが大きく下がった。
- 提供サービス
- ・マレーシアの富裕層エリア店舗におけるテストマーケティング(展示・販売)の実施
・ブランド毀損を防ぐための販売価格設定のアドバイスおよび、現地スタッフへの商品価値(職人の手仕事)の共有・販売レクチャー
・現地調達可能な代替品(マニキュアのトップコート等)を活用した、現地スタッフ主導によるワークショップの運営代行
・現地のファミリー層から支持を集めるインフルエンサーを活用したSNSプロモーション・集客支援
・購入者の属性や現地でのリアルな反応、およびマレーシア市場(展示会や小売店など)での新たな活用可能性に関する一次情報のフィードバック
有限会社葵サンプル
有限会社葵サンプルは、静岡県焼津市に工房を構え、40年以上にわたり精巧な食品サンプルの製造・販売を手がける企業です。
職人の熟練した手作業によるリアルな製品作りに加え、実際の製造現場を全開放した工場見学や体験ワークショップを運営しています。
飲食店の魅力を視覚的に伝える販売促進ツールとしてはもちろん、国内外の観光客に向けて「日本の食品サンプル文化」の楽しさと驚きを発信し続けています。
http://www.aoisample.com/

Culture Link Malaysia. Sdn.Bhd
元年堂の運営母体。マレーシア・クアラルンプールで十割そばを提供する元年堂を運営しつつ、日本企業やアーティストなど日本文化、日本の作品を展示する“ギャラリースペース”を併設。海外進出支援やテストマーケティングのサポートを行っている。
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工場を「全開放」する、葵サンプルならではの体験価値
石川(元年堂):
松原さん、今回はマレーシアでの2ヶ月間にわたるテストマーケティング、本当にお疲れ様でした!改めてお話を伺えるのを楽しみにしていました。まずは、松原さんが食品サンプルづくりに携わるようになったきっかけから教えていただけますか?
松原(葵サンプル):
こちらこそ、ありがとうございました。私はもともと実家が食品サンプルの製造をしていて、私は小さい頃からその姿を見て育ちました。ただ、最初から家業を継いだわけではなくて、以前はホテル業界で働いていたんです。2000年頃に父が体調を崩した際、「自分から長年のお客様を切ることはできない」という話になり、そこから手伝うようになって、気づけばもう26年ほど経ちますね。
石川:
ホテルでのご経験があったのですね!葵サンプルのウェブサイトや商品を拝見していると、焼津の海産物をモチーフにした精巧さはもちろん、ワークショップへのこだわりも強く感じます。他社との一番の違いはどこにあるのでしょうか。
松原:
一番大きな特徴は、「工場の中をすべて開放している」という点ですね。日本全国に食品サンプルの工場はたくさんありますが、体験ができる施設って、大抵は綺麗に整えられた専用の工房なんです。というのも、どうやってリアルに作るかという技術は各社の命。本当の作業現場はあまり見せたくないというのが本音なんです。でも、私どもの工場は入ると全体が見渡せる小さな工場ですが、使っている機材も材料もすべてオープンにしています。
石川:
隠さずにすべてを見せる。それ自体が素晴らしいエンターテインメントであり、自信の表れでもありますよね。
松原:
そうですね。あとは最大60名まで一度に団体を受け入れられるテーブルも用意しています。東京の合羽橋や、発祥の地である岐阜の郡上八幡など有名な場所もありますが、これだけの人数を一度に受け入れられる場所は珍しいと言われます。焼津はお魚が美味しい街なので、県外からマグロやカツオを食べに来られたお客様が、旅の思い出を深める「もう一つの体験」として立ち寄ってくださることが多いんですよ。

伝統を背負って挑む、未知のマレーシア市場
石川:
そんな地域に根差した葵サンプルさんが、今回なぜマレーシアでのテストマーケティングという、海外への一歩を踏み出そうと思われたのですか?
松原:
以前から「インバウンドのお客様をもっとお呼びしたい」という強い思いがありました。静岡には静岡空港があるのですが、そこから降りた観光客の皆様って、どうしてもそのまま御殿場のアウトレットや東京へ直行されてしまうルートが多くて、なかなか静岡周辺を回遊していただけないんです。東京の旅行会社に営業をかけたりもしましたが思うような成果が出ず、「海外と繋がるきっかけがどこかにないか」と模索していたタイミングでした。
石川:
なるほど、まさにインバウンド強化に向けた布石だったわけですね。マレーシアという市場に対しては、元々どんなイメージをお持ちでしたか?
松原:
正直に言うと、私自身は海外での販売経験が全くなかったので、本当に未知の世界でした(笑)。ちょうど親戚の子がバイオリンの発表会でクアラルンプールに行くという話を聞いたくらいで、どんな場所なのか、どんな料理があるのかも想像がつかなくて。完全に石川さんたちにお任せする形からのスタートでしたね。
石川:
現地はスパイスや油を多く使った料理が中心で、非常に活気のある国なんですよ。今回のテストマーケティングでは、現地での販売価格を日本の静岡で売るよりも少し高め、それこそ東京の価格帯に近い設定にされましたが、これにはどのような意図があったのでしょうか?
松原:
価格設定はすごく悩みました。安くしてたくさん売る方法もあったかもしれませんが、私たちは一つひとつを手仕事で作る価値を大切にしています。東京でサンプルを作っている仲間たちも、みんな本当に大変な思いをして技術を磨いている。だからこそ、そのブランド価値を簡単に下げてはいけないなと思ったんです。安かろう悪かろうではなく、私たちの「技術の価値」を真っ直ぐに伝えた上で、現地の方がどう反応するかを確かめたいという想いがありました。

現地で見えた、言葉の壁を越える「没頭」と「手応え」
石川:
その松原さんの想いを受けて、私たちも現地のスタッフと一緒にチラシやブースで「日本の職人による手仕事の価値」をしっかり訴求しました。結果として、2ヶ月間の販売を通じて、全体的に私たちの想定を大きく上回る反響をいただきました。キーチェーンなど『身に着けるアイテム』よりも、自ら体験できる『DIYキット』が一番売れるという嬉しい驚きがあったんです。
松原:
本当ですか!事前の予想では、子どもたちがバッグにつけられるキーチェーンが一番人気になるかなと思っていたので、DIYキットがそれだけ出たのは驚きですし、すごく嬉しいですね。
石川:
現地の富裕層エリアのファミリー層が中心だったのですが、マレーシアの親御さんは非常に教育熱心で、「子どもにクリエイティブな経験をさせたい」と、価格を気にせず購入されていきました。さらに、現地のワークショップにはヘアネットを被ったプロのパティシエさんたちも3名参加してくださったんですよ。
松原:
へえ!お菓子のプロの方が参加してくださったんですね。
石川:
はい、手先はすごく器用なはずの彼らですが、実際にパーツを組み合わせたり、接着したりする工程に「これは難しい……!」とかなり苦戦されていて。綺麗に仕上げながらも、日本の技術の奥深さに終始唸っていました。子どもたちも、親御さんがびっくりするくらい真剣な表情で、時間を忘れて黙々と没頭していました。
松原:
その「没頭する姿」は、日本の子供たちと全く同じですね。日本の学童保育で40名ほどの子どもたちを受け入れるときも、普段は元気いっぱいのやんちゃな子が驚くほど静かに集中するので、先生方が「こんな姿は見たことがない」と感動されるんです。瞬間接着剤の量とか、ちょっとした艶の出し方とか、言葉が通じなくても「世界に一つだけのものを作る楽しさ」や「完成したときの驚き」は、万国共通なんだと改めて自信になりました。石川さんが現地でマニキュアのトップコートを艶出しの代用として見つけてくれたアイデアも、本当に素晴らしかったと思います。


AIからお祭りまで!食品サンプルの無限の可能性
石川:
なんとか現地の物で代用できないかと必死でした(笑)。今回の検証を通じて、マレーシア唯一の「日本の伝統手仕事を体験できるコンテンツ」として、非常に強い引き合いがあると感じました。また、現地の食品EXPOや大手キッチン用品店を回った際、海外の卸業者やレストランが「いかにお客様の目を引くか」という視点でサンプルを求めている現場にも遭遇しました。
松原:
そうですね。動画でも少しお話ししたのですが、食品サンプルの最大の威力は「買った後の想像を膨らませること」にあるんです。例えば焼津の冷凍マグロをパックのまま置いても売れませんが、隣に美味しそうな「鉄火丼」のサンプルを置くだけで、お家での食卓がイメージできて一気に売り上げが伸びる。溶けてしまうものや、中身が見えないものの魅力を視覚的に伝える力は、海外の飲食店でも必ず役に立つはずです。
石川:
まさにその通りだと思います。飲食店以外にも、何か新しいサンプルの活用法などは増えているのでしょうか?
松原:
実は、食品サンプルの用途って今や無限大なんです。最近ではテクノロジーの分野、例えばAIを活用した工場の自動検品システムの研究で当社のサンプルが使われています。「この焼き色のクッキーはOK、これ以上焦げたらNG」という基準を機械に学習させる際、本物の食品だと腐ってしまいますが、サンプルなら形も色も変わらず、何度でも実験に使えますから。
石川:
テクノロジーの学習用データとしてサンプルが活躍しているとは、盲点でした!
松原:
他にも、最近の異常気象による猛暑で、神社のお祭りの時にお魚をお供えしておけないというお悩みから、「お供え用の鯛を作ってほしい」というご依頼をいただいたりもします。時代の変化に合わせて、私たちがまだ思いついていないような使い道が、海外を含めてまだまだ眠っているなと感じています。
海側からの富士山を、焼津を目指してきてほしい
石川:
今回、初めての海外挑戦を終えてみて、マレーシア進出や海外テストマーケティングを検討している他の日本企業に向けて、何かメッセージをいただけますか?
松原:
私たちのような小さな町工場からすると、海外へ商品を出すというのは本当にハードルの高いことでした。でも今回、挑戦させていただいて強く思うのは、「結果がどうであれ、挑戦したという事実そのものに価値がある」ということです。実際にやってみたことで、自分たちの中に一つ太い軸ができましたし、もし次に何かチャンスがあれば、次はもっと低いハードルで飛び越えられる気がしています。
石川:
「まずはやってみる」という事実が、企業の資産になるということですね。最後に、今回のインタビュー記事を通じて、これだけは読者に紹介してほしいというポイントがあれば教えてください。
松原:
作っているもののクオリティはもちろんですが、何よりも「静岡・焼津」という、この場所を世界の方に知ってほしいです。最近は海外からの観光客の皆様が山梨や箱根に集中しがちで、富士山といえばあちらのイメージが強いかもしれませんが……実は、静岡の海側(焼津側)から眺める富士山って、本当に素晴らしいんですよ。
石川:
駿河湾越しに見る富士山、絶景ですよね!
松原:
そうなんです。だからこそ、今回の記事をきっかけにマレーシアや世界の方が「この食品サンプルを作っている、海の綺麗な焼津という街に行ってみたい」と思ってくださったら、それが私にとって一番の喜びですね。ぜひ、美味しいお魚と、私たちのオープンな工場体験を目がけて、静岡へ遊びに来ていただきたいです。
石川:
葵サンプルさんの技術と焼津の魅力が、今回のマレーシアを起点にさらに世界へ広がっていくよう、私たちも引き続き応援しています。松原さん、本日は本当にありがとうございました!

【編集後記】
「職人が磨き上げた手仕事の価値を、海外でも簡単に下げてはいけない」と語る松原さん。言葉の壁を軽々と越えて現地の親子やプロを没頭させた精巧な技術と、そこから見えた食品サンプルの無限の可能性。今回の挑戦でさらに太くなった軸を胸に、次は焼津の美しい海と富士山を世界へ届ける新たな挑戦が動き出しそうです。
海外進出をご検討されているものの、具体的な進め方が不明確なお客様へ。
弊社では、マレーシアにて蕎麦店運営とテストマーケティングが可能なギャラリースペースを運営しており、
会計やマーケティング、店舗開発のスペシャリストを集めた専門チームがお客様の課題解決を支援いたします。
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