ハラールの国家資格保持者に聞く!
日本企業が陥りやすい誤解とマレーシア進出の成功の秘訣
【ハラ-ルの窓口】専属コンサルタント ラムセ 様
CULTURELINK MALAYSIAが提供する「ハラールの窓口」は、ハラール認証取得そのものをゴールにするのではなく、認証前の市場調査・売り先設計から、現地販路開拓、商談支援、OEM活用、輸出実務までを一気通貫で伴走するサービスです。
ハラール市場では、認証を取得しても「誰に、どこで、どう売るか」が設計されていなければ、事業成果につながりません。
本記事では、【ハラールの窓口】専属コンサルタント ラムセが、ハラール対応において日本企業が陥りやすい誤解とマレーシア進出の成功の秘訣について解説します。
登場人物
ラムセ(Eizanur Muhammad Bin Ramse)
【ハラールの窓口】専属コンサルタント
JAKIMハラールエグゼクティブ(マレーシア政府認定の国家資格保持者)
ハラール対応・海外展開アドバイザー
マレーシア現地の冷凍食品・アイスクリーム工場 経営者

マレーシア在住。幼少期と大学時代(名古屋大学 機械工学専攻)を日本で過ごし、大手自動車メーカーや通信企業でシステムエンジニアとして活躍。その後、食への情熱から異業種である飲食業界へ転身し、日本の飲食店で5年間の現場経験を積む。現在はマレーシアで自社工場を経営する傍ら、国家資格「JAKIMハラールエグゼクティブ」の知見を活かし、日本企業のハラール認証取得を多角的にサポートしている。
ーまずは自己紹介をお願いします。
ラムセ:
現在42歳になります。私の日本語のベースは、親の仕事の都合で小学1年生から4年生まで日本で暮らした経験にあります。
一度マレーシアに帰国したものの、日本の文化が恋しくなり、「自分の力でもう一度、日本と深く関わる人生にしたい」と一念発起し、大学進学を機に再び日本へ渡りました。名古屋大学で機械工学を学び、卒業後は日本の自動車関連企業や通信関連企業でシステムエンジニアとして働いていました。
ただ、もともと日本とマレーシアの「食文化」が大好きだったため、どうしても食に関わる仕事がしたいという思いが抑えきれず、調理学校に通い直し、日本の飲食店で5年ほど現場を経験しました。その後マレーシアへ帰国し、現在はアイスクリームなどの冷凍食品メーカーを立ち上げ、工場を経営しています。
自身のビジネス展開から「ハラールの専門家」へ
ーマレーシアでご自身の工場を経営される中で、なぜ国家資格である「JAKIMハラールエグゼクティブ」を取得しようと思ったのでしょうか。
ラムセ:
一番の理由は、自分のビジネスを拡大するためでした。マレーシアのマーケットで食品メーカーとして勝負するには、ハラール認証が不可欠です。2018年の創業当初は、外部の専門家に依頼して認証を取得しましたが、ビジネスの規模が大きくなるにつれ、外部委託では日々の細かな管理が行き届かず、突然の監査にも自力で迅速に対応できる体制が必要になってきました。
そこで、2022年に自ら「JAKIMハラールエグゼクティブ」の資格を取得しました。自社のビジネスだけでなく、ハラール認証を必要としている他の企業様のサポートもできるチャンスが広がると考えたからです。
ー「JAKIMハラールエグゼクティブ」とは、具体的にどのような役割を担う資格なのですか。
ラムセ:
JAKIM(マレーシアイスラム開発局)が認定する国家資格です。JAKIM認定のトレーナーのもとでハラール認証の仕組みや審査基準を深く学びます。企業とJAKIMの間に入り、認証取得までの道のりをスムーズに繋ぐ「架け橋」のような役割を持っています。規模の大きい会社になると、社内にこの資格保持者を置くことが必須要件にもなります。
「豚とアルコールを抜けばいい」は大きな誤解!
ーハラール対応を進める上で、日本企業が最初に「難しい」と感じるのはどのような部分でしょうか。
ラムセ:
第一に「言語の壁」です。ハラール認証のマニュアルや本部とのやり取りは基本的にマレー語で行われます。さらに、「ハラール」だけでなく、「ハラーム(口にしてはいけないもの・禁忌)」や「シャリア(イスラムの法律・教え)」など、日本人には馴染みの薄いアラビア語の専門用語も理解しなければなりません。単純な翻訳ではなく、宗教や文化の違いからくる細かなニュアンスまで正確に掴む必要があるため、ここは非常に時間がかかり大変な部分だと思います。
ー日本の企業では「原材料から豚とアルコールさえ避ければハラールになるんでしょ?」と誤解している方も多いと思います。この点についてはいかがですか。
ラムセ:
豚とアルコールを避けるというのは決して間違いではありませんが、実は食材以外の要素も大きく関わってきます。ハラールは食品にとどまらず、ムスリム(イスラム教徒)の生活・人生全般に関わるものだからです。
例えば、ネーミングです。「ホットドッグ」という商品名がありますが、イスラム教では犬(ドッグ)は少しセンシティブな動物であるため、ハラールな食材を使っていてもネーミングの時点でNGになります。(この場合は「ソーセージ」等に変更する必要があります)
また、パッケージデザインも要注意です。日本らしさを表現するために「鳥居」の絵を載せたいという企業様もいらっしゃいますが、鳥居は他宗教の象徴です。他の宗教のシンボルを描くことは宗教的な矛盾を生み、審査で弾かれるケースもあります。
ー製造工程などの見えない部分でも気を付けることはありますか。
ラムセ:
とてもベーシックな部分ですが、皆さんが盲点になりがちなのが「お水」です。 工場で使う浄水器のフィルターに、動物の「骨」が使われていることがあります。もしその骨がハラールで処理された動物のものでなければ、いくら原材料にこだわっても、製造工程全体が「ハラーム(禁忌)」となってしまいます。
このように、原材料だけでなく、ネーミング、パッケージ、そして製造工程に至るまで、全体を包括的にチェックし、JAKIMの基準に沿ってアドバイスをするのが私たちの重要な役割です。

なぜ世界標準の「JAKIM認証」を目指すべきなのか
ー日本のハラール認証機関ではなく、マレーシアの「JAKIM認証」を取得するメリットは何でしょうか。
ラムセ:
JAKIMは政府所属の機関であり、1990年代から活動している「世界ハラールの基準(グローバルスタンダード)」です。多民族国家であるマレーシアにおいて、お互いが安心して食事をするための基準として発展してきました。現在、JAKIM認証は50カ国以上で通用する非常に強い認証です。
一方、日本の認証機関の多くは一般社団法人が運営しており、マレーシア(JAKIM)やインドネシア(BPJPH)の政府機関から「認定」を受ける形で運営されています。そのため、日本の認証は1年ごとの更新になることが多いですが、JAKIM認証は2年ごとの更新であり、実績が良ければ最長5年まで延長できます。長期的なコストや信頼性を考えると、JAKIM認証の取得は非常にメリットが大きいです。
ーイスラム教徒が一番多いのはインドネシアです。最初からインドネシアの認証(BPJPH)を取った方が良いのでは?と考える企業もいると思いますが。
ラムセ:
実は、インドネシアの審査は非常に厳格です。例えば、食品の中身だけでなく「外装のパッケージを製造している企業」自体もハラール認証を取得していなければならないケースがあります。
一方、マレーシアのJAKIMは、そこまで極端ではなく、もう少し相談ベースで柔軟に対応できる余白があります。そのため、まずは世界的な信頼度が高く入りやすい「JAKIM」を取得し、それを足がかりにしてインドネシアへ展開していく方が、日本企業にとっては挫折しにくく、スムーズな道のりになると思います。
メイド・イン・ジャパンより「メイド・バイ・ジャパン(OEM)」の強み
ー日本で認証を取って輸出するのではなく、マレーシア現地で「OEM製造」をするという選択肢について教えてください。
ラムセ:
現地OEMの最大のメリットは「価格(コスト)」です。 日本で製造してマレーシアに輸出すると、どうしても販売価格が高くなってしまいます。マレーシアの方々は日本の商品が安くて美味しいことを知っているため、現地で高額だと買ってくれません。実際、日系の大手ディスカウントストアも価格の壁にぶつかり、店舗数を縮小せざるを得ないケースがありました。
マレーシアで製造すれば、コストを1/3から半分程度に抑えられます。パッケージや見た目、品質の基準は「日本のスタンダード」を保ちつつ、価格を「現地のローカル価格」に落とし込む。これがお客様にとって一番魅力的です。
ー現地でOEM製造をする際、日本の味を完全に再現することはできるのでしょうか?工場選びのポイントも含めて教えてください。
ラムセ:
正直にお伝えすると、「味の完全な再現」は最も難しいポイントです。 ハラール対応の原材料サプライヤーは限られていますし、「日本企業A社の特別な牛乳じゃないと出せない味」となれば、その代替品をハラールの枠内で見つけるのは至難の業です。そのため、「完全に同じ味」を目指すのではなく、現地のハラール材料で「最高に美味しいもの」を作るという視点の調整が必要です。
工場選びに関しては「企業の規模感」と「取得済みの認証」を確認してください。小規模すぎると、商品がヒットした際に生産ラインを拡大できません。また、将来的にインドネシアや中東へも輸出したいのであれば、それに紐づく国際的な品質規格をすでに取得している大規模な工場を選ぶべきです。
ハラール展開に悩む日本企業様へのメッセージ
ーこれからハラール対応やマレーシア進出を考えている企業が、失敗しないために準備しておくべきことは何でしょうか?
ラムセ:
自社工場での製造にこだわるのであれば、「工場を完全にハラール対応へ転換する覚悟があるか」を確認してください。日本では乳化剤などに豚由来のものが使われることが多いですが、それらを一切排除できるかどうかが鍵になります。 伴って売上の構成も大きく変わる可能性があります。
もしそれが難しければ、OEMという選択肢を持つことです。OEMであれば自社工場を改装する必要もなく、リスクもコストも大幅に下げられます。
ー最後に、海外展開への挑戦に迷われている企業様に向けて、勇気が出るような前向きなメッセージをお願いします。
ラムセ:
ハラール認証を取得することで、商品のニーズとマーケットは確実に世界へ広がります。「イスラムのルールは難しそう」「自社の商品でも通用するのだろうか」と一人で悩まないでください。まずは私たちのようなアドバイザーに相談していただければ、御社の商品がハラール化できる難易度、かかる時間や費用感を総合的に判断し、ベストな進め方を提案できます。
私たちがAからZまで二人三脚で伴走し、マレー語のやり取りや書類の対応もしっかりサポートします。専門家が間に入ることで、難しく見えるハラールマーケットは決して「怖くないもの」になります。ハードルが高いと感じる業態でも、まずは一度ご相談ください。一緒に最適なルートを見つけましょう!
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弊社では、マレーシアにてそば店運営とテストマーケティングが可能な企画展示会スペースを運営しており、会計やマーケティング、店舗開発のスペシャリストを集めた専門チームがお客様の課題解決を支援いたします。
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