マレーシア進出は、現地で決める。
おにぎり専門店「具利」が挑んだ
“経営判断のためのテストマーケティング”
ドリームスタッフ株式会社/おにぎり専門店 具利 様
- 業界・業種
- 人材サービス・飲食事業(静岡県/総合人材派遣、おにぎり専門店の運営)
- 感じていた課題
- •派遣事業に続く新たな事業の柱として飲食事業を育て、静岡の食材や地域の魅力を全国・海外へ届ける道筋をつくりたかった。
•海外事業の経験がなく、現地での原材料調達、商品の再現、価格設定、販売方法、オペレーションのすべてが未知数だった。
•日本国内で手応えのある商品がマレーシアでも選ばれるのか、レポートやアンケートだけではなく、実際の購買行動で確かめたかった。
•単発のイベント出店で終わらせず、将来の店舗展開や継続出店に向けた経営判断の材料を得たかった。
- 支援結果
- •7.5万人規模の「Bon Odori 2026」で、たこ焼き風・ライスバーガー風の新感覚おにぎりと和ドリンクを実売し、商品・価格・提供体制を総合的に検証した。
•イベント内では中上位の価格帯でありながら、見た目の新規性と「食べてみたい」という動機で購入され、安さだけではない需要の可能性を確認した。
•抹茶ラテが最も支持され、次いでビーフのおにぎりが好調。暑い気候や屋外イベントでは、冷たい飲料の需要が強いという現地ならではの発見を得た。
•現地のコンビニや競合商品を自ら確認し、日本の米・食感・握りたての価値を伝える余地と、ローカライズ商品を併用する可能性を見いだした。
•経営者とスタッフが同じ現場を経験したことで、帰国後の社内議論が具体化し、元年堂での小規模展開や次回イベントに向けた意欲が生まれた。
- 提供サービス
- •「Bon Odori 2026」への出店企画および、経営判断につなげるテストマーケティング設計
•現地の売れ筋、競合商品、価格帯、イベント環境に関する事前調査と商品・価格の助言
•現地調達可能な原材料・備品の選定、ソース等の事前準備、炊飯を含む調理再現の支援
•マレーシアの気候、食文化、持ち歩きやすさ、提供スピードを踏まえた商品・オペレーション設計
•現地スタッフの手配、販売導線・ブース運営の準備、当日の接客・製造・販売サポート
•現地で発生した課題への即時対応と、販売状況を踏まえた現場改善
•終了後の振り返り、得られた一次情報の整理、次回イベントや小規模展開に向けた検討支援
2026年7月11日・12日、マレーシア・クアラルンプール近郊で開催された7.5万人規模の日本文化イベント「Bon Odori 2026」。CULTURE LINKが運営する「元年堂」のブースでは、ドリームスタッフ株式会社が企画・開発した新感覚おにぎりと和ドリンクを販売しました。
今回の目的は、単にイベントで売上をつくることではありません。現地で同じ品質の商品を作れるのか。どの価格なら選ばれるのか。暑さや購買行動に合う商品は何か。そして、その先に継続的な事業の可能性はあるのか。経営判断に必要な一次情報を、実際の販売現場から得ることでした。
海外経験がほとんどない中で一歩を踏み出した理由、現地で初めて見えた市場のリアル、そして「ここまでやってくれるとは思わなかった」と語るCULTURE LINKの支援について、ドリームスタッフ株式会社 代表取締役・稲葉隆典氏に伺いました。
ドリームスタッフ株式会社/おにぎり専門店 具利
静岡県を拠点に、総合人材派遣サービスを展開する企業です。2018年の設立以来、人と企業のつながりを大切にしながら事業を拡大しています。
2025年には飲食事業の新たな柱として、おにぎり専門店「具利(ぐり)」を開業。静岡県内の優れた食材を取り入れ、日本の国民食であるおにぎりを通じて、静岡の魅力を全国、そして世界へ届けることを目指しています。
https://dreamstaff.jp/

Culture Link Malaysia. Sdn.Bhd
元年堂の運営母体。マレーシア・クアラルンプールで十割そばを提供する元年堂を運営しつつ、日本企業やアーティストなど日本文化、日本の作品を展示する“ギャラリースペース”を併設。海外進出支援やテストマーケティングのサポートを行っている。
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派遣事業に続く新たな柱へ。「おにぎり」で静岡を伝える
野口(CULTURE LINK):
まず、ドリームスタッフさんの事業と、今回出展された「具利」の位置づけを教えてください。
稲葉(ドリームスタッフ):
ドリームスタッフでは、総合人材派遣サービスを中心に事業を行っています。その中で、派遣事業とは別に、飲食事業でも軸となるものをつくりたいと考え、約1年前におにぎり専門店「具利」を始めました。
静岡県内には良い食材がたくさんあります。そうした食材をおにぎりに取り入れながら、「具利」自体が静岡のアンテナショップのような存在になり、まずは全国へ、将来的には世界へ、静岡の魅力を届けられたらと考えています。
野口:
数ある食の中で、なぜ「おにぎり」だったのでしょうか。
稲葉:
おにぎりは、コンビニにもスーパーにも家庭にも、昔から当たり前のようにある日本の国民食です。一方で、具材や見せ方を変えれば、まだまだ新しい魅力をつくれるとも感じました。海外でも日本食として知られていますし、日本の魅力を伝えるなら、こうしたシンプルで身近なものから始めるのも面白いと思ったんです。
「何も知らないから、まず自分の目で見る」マレーシアへ踏み出した理由
野口:
海外市場の中で、マレーシアに関心を持った背景を教えてください。
稲葉:
マレーシアは日本企業も多く進出していて、日本食も比較的浸透している印象がありました。海外展開に向けて何かきっかけが欲しいと思っていた時に、知人企業からマレーシアへ行く話を聞き、「まずは行ってみよう」と思ったのが始まりです。
最初から明確な進出計画があったわけではありません。何も知らないからこそ、まず自分で現地を見て、感じて、その上で今後を考えようと思いました。こういうタイミングを逃すと、次は1年後になるかもしれませんし、そのまま行かなくなってしまうこともあります。だから、思い切って一歩を踏み出しました。
野口:
市場レポートを読んでから判断するのではなく、まず現地へ行くことを選ばれたのですね。
稲葉:
そうですね。自分の目で確かめることが、一番の目的でした。
売れるか以前に、「現地で作れるのか」山積みだった不安
野口:
出店を決めた時、どのような不安がありましたか。
稲葉:
全く知らない国で、日本で売っているものと同じ水準の商品を作れるのか。そこが最初の大きな不安でした。仕入れはどうするのか、どうやって作るのか、どのように販売するのか。私たちには現地の知識がないので、分からないことが山積みでした。
ただ、野口さんや現地責任者の石川さんと話していく中で、一つずつ不安が解消され、「これならできそうだ」というイメージが見えるようになりました。売れるかどうか以前に、自分たちが売りたいと思える商品を、現地で再現できるかどうか。それを確認できたことは大きかったです。
野口:
市場そのものについては、何を確認したいと考えていましたか。
稲葉:
現地の方がおにぎりをどう見るのか、どんな反応をするのかを知りたかったです。それから、コンビニやスーパーに本当におにぎりが並んでいるのか、どの程度の価格で、どんな品質の商品が受け入れられているのかも、自分の目で確認したいと思っていました。
実際に見ると、おにぎりは想像以上に多く並んでいました。価格も日本と大きくは変わりません。一方で、米の食感や味には、日本のおにぎりとの違いを感じました。現地の好みに合わせた商品も必要ですが、「これが日本のおにぎりなんだ」と感じてもらえる品質を届ける余地もあると思いました。

レポートではなく、実際に売る。Bon Odoriを選んだ理由
野口:
今回、アンケートや商談だけではなく、Bon Odoriで実際に販売する方法を選んだ理由は何でしょうか。
稲葉:
具利は日本国内でも、店舗販売だけでなく、スポーツイベントやマルシェなどに出店しています。店舗とイベントでは客層も売れ方も違いますし、イベントの内容に合わせて商品やオペレーションを変える必要があります。日本のイベントでは手応えがあったので、同じような舞台でマレーシアでも受け入れられるのか、比較してみたいと思いました。
野口:
商品や価格を決める上で、CULTURE LINKからの事前情報は役立ちましたか。
稲葉:
非常に大きかったです。現地ではどのような商品が売れているのか、どの価格帯なら食事として見られるのか、どのくらいならイベントで買いやすいのか、競合と比べてどうなのか。石川さんから具体的な情報をいただき、こちらで調整しながら商品をつくることができました。
さらに、限られた時間の中で何個作り、どれだけ提供できるのかというオペレーションも重要でした。たこ焼き風の丸型おにぎりや、手に持ちやすいライスバーガー風おにぎりは、見た目の新しさだけでなく、イベントでの食べやすさや提供方法まで含めて設計した商品です。


現地でしか見えなかった「売れる条件」― 暑さ、価格、競合
野口:
実際に販売してみて、事前の予想と違ったことはありましたか。
稲葉:
一番売れたのは抹茶ラテで、次がビーフのおにぎりでした。本音を言えばフードが一番売れてほしかったのですが、現地はとにかく暑く、会場でも食べ物を持ち歩く人より、冷たい飲み物やアイス系の商品を手にする人が多かったんです。これは、実際に現場へ行かなければ分からなかったことでした。
野口:
価格については、イベント内では比較的高めの設定でした。お客様の反応をどう見ましたか。
稲葉:
最初は、価格が理由で売れない可能性もあると思っていました。ただ、現場で見ていると、価格だけで選ばれているわけではないと感じました。見たことのない形で、「食べてみたい」と思っていただけたことが購入につながったのではないでしょうか。もう少し高くても選ぶ方はいたかもしれません。
日本人のお客様は現場感として3分の1ほどで、それ以外のお客様にも手に取っていただきました。現地のライスバーガー系の商品を扱う方からも「とても良い商品ですね」と声をかけられ、同業の目から見ても魅力のある形だったのだと思います。
野口:
今回の結果を、成功と捉えていますか。
稲葉:
はい。新しい見た目の商品を、決して安くない価格で出したので、全く売れない可能性もありました。それでも実際に購入していただき、現地で商品を作り、提供し、反応を見るところまでやり切れた。私は、今回の挑戦は成功だったと考えています。

売上だけでは測れない。スタッフと「同じ景色を見る」価値
野口:
テストマーケティングとはいえ、投資判断として迷いもあったと伺いました。
稲葉:
経営者ですから、最初に考えるのは費用対効果です。どのくらい費用がかかり、どの程度戻ってくるのか。テストマーケティングとして、本当に必要な投資なのか。金額が見えた時には、正直かなり悩みました。
ただ、自分たちだけで全く知らない国へ行けば、もっと費用も時間もかかったと思いますし、きっかけがなければ何も始まりません。「勉強代だと思えば、この経験は安い」と考えて決断しました。
もう一つ大きかったのは、スタッフを一緒に連れて行けたことです。私一人が現地を見て、帰国後に話しても、経験していないスタッフにはなかなか伝わりません。自分たちで現地へ行き、社長と一緒に商品を作って売った。その共通体験があることで、帰ってからの話の具体性も、次へ進もうとする温度感も全く違います。
今回の経験は、ゼロどころか大きなプラスです。ただし、本当に意味のある投資にできるかどうかはこれからです。ここで終われば単なる経験で終わります。得たものを整理し、商品をブラッシュアップし、実際の事業につなげて初めて価値になる。そこまでやるつもりです。

「ここまでやってくれるとは」右も左も分からない挑戦を支えた伴走
野口:
CULTURE LINKの支援について、率直な感想をお聞かせください。
稲葉:
本当に良かったです。正直、ここまで手厚くやってもらえるとは思っていませんでした。石川さんの事前調査や段取りはもちろん、原材料やソースの準備、炊飯、現地スタッフの手配、当日の運営まで、必要なことを一緒に進めていただきました。
現場でも、CULTURE LINKの皆さんが販売側に入り、抹茶ラテを作り、接客し、私たちと同じ目線で動いてくれました。現地で手伝ってくださったスタッフの方々も非常に良く、右も左も分からない私たちにとって、本当に助かりました。
野口:
当初期待されていた役割は、満たせたでしょうか。
稲葉:
もちろんです。期待以上でした。調査や助言だけではなく、実際に商品が提供できる状態まで準備し、現場に入って一緒にやり切ってくれたことが大きかったです。
次は、リスクを抑えながら一歩ずつ。マレーシアで「経験」を「事業」に変える
野口:
今回の結果を踏まえ、次の展開をどのように考えていますか。
稲葉:
まずは社内で今回の経験を整理し、次に向けた具体的な形をつくっていきます。元年堂さんと一緒に、できるだけリスクの少ないところから始められれば理想です。おにぎりをどのような形でマレーシアの方に届けるのか、小さく試しながら詰めていきたいと思っています。
マレーシアではイベントも多いと聞いていますので、継続的に出店して反応を見ていく方法もあります。今回、暑い環境では冷たい商品に強い需要があることも分かったので、おにぎりに加えて、現地に合う新しい商品も試していきたいですね。
野口:
最後に、海外進出を考えながら、まだ一歩を踏み出せていない日本企業へメッセージをお願いします。
稲葉:
ゼロを1にするのは、本当に難しいです。私自身も今回かなり悩みました。それでも、周囲に協力していただきながら一歩踏み出し、非常に良い経験と結果を得ることができました。
私たちのような小さな会社でも、海外で実際に商品を売り、現地を知る経験ができました。検討しているのであれば、機会を逃さず、勇気を持って一つやってみる。それは会社にとって、とても大きな一歩になると思います。

【編集後記】
海外テストマーケティングの価値は、「何個売れたか」だけでは測れません。現地で商品を再現できるのか。どの価格で選ばれるのか。気候や購買行動にどのような違いがあるのか。スタッフが未知の環境でどこまで動けるのか。今回の挑戦は、海外進出に伴う複数の不確実性を、実際の現場で一つずつ確かめる取り組みでした。
そして何より印象的だったのは、稲葉代表が「経営者だけでなく、スタッフと同じ景色を見たこと」に大きな価値を置いていたことです。現地で得た一次情報と共通体験は、帰国後の社内議論を動かし、次の挑戦を自分たちの言葉で考える土台になりました。
CULTURE LINKは、調査や助言をするだけの支援会社ではなく、現地で商品を作り、売り、課題に対応し、次の判断材料を持ち帰るまでを担う「現地の海外事業チーム」として伴走します。具利のおにぎりが、静岡からマレーシアへ、そしてASEANへ広がる次の一歩を、引き続き支援してまいります。
海外進出を「行って終わり」にしないために
市場調査から実売検証、次の経営判断まで、マレーシアの現場で一緒に動きます。

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